混合ガスからCO2のみを吸着する新素材を開発 京大

京都大学は2日、さまざまなガス分子の中から二酸化炭素(CO2)に対してのみゲートを開いて吸着するフレキシブル多孔性材料の開発に成功したと発表した。CO2を分離回収する新素材への応用が期待できる。この研究成果は英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に掲載された。

2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するために、CO2を効率的に分離回収する技術の開発が求められている。その中で、多孔性材料を利用した吸着分離法はエネルギー効率が高いため着目されている。しかし、これまでの多孔性材料を用いたガス分離の研究では、主に二成分混合ガスに焦点が当てられており、多数の類似成分ガスから単一成分を識別する多孔性材料の開発に関する研究はほとんど行われていなかった。工場や発電所などから廃棄されるガスにはCO2以外にもさまざまな成分を含んでいて、特にCO2だけを選択的に回収することは難しいため、これまではエネルギー効率の良くない化学吸着法などが用いられてきた。

京都大学の研究グループは、多孔性配位高分子(PCP/MOF)に着目した。これは有機物と金属イオンが相互に結合して三次元的な格子構造を形成した多孔性の化合物だ。規則的に配置されたナノメートルサイズの無数の細孔を持ち、その細孔に小分子を取り入れることができる。さらにPCP/MOFは、細孔の構造をデザインして機能性を持たせることが可能だ。例えば、ガスの吸着前には細孔が閉じていて、一定の圧力に達すると構造を変化させて細孔を拡大し、ガスを吸着するゲートオープン挙動という特性を持たせることができる。

今回開発された材料は、CO2吸着前は分断されてポケット状になっている隙間が、CO2吸着後には相互につながり一次元のチャンネルのようになって、多量のCO2を取り込むことができる。CO2と類似した窒素(N2)やメタン(CH4)など9種類のガス分子についても吸着特性が調査されたが、これらの気体をほとんど吸着することはなかった。また、CO2を含む混合ガスからもCO2のみを排他的に識別・分離することができた。

今回の研究により、これまで未開拓だったCO2に対する選択的な吸着現象のメカニズムとその設計指針が解明された。今後は、同様の性質を示すさまざまな素材の開発につながっていき、CO2を始めとするさまざまなガスの分離や精製といった難題を解決する、新素材への応用が期待できるとしている。

相互篏合型の⼆次元シート積層構造によるガスの吸着分離のイメージ図

画像提供:京都大学(冒頭の写真はイメージ)