世界初の常温常圧超伝導体の合成に成功か? 韓国
韓国の研究者らが世界で初めて「常温常圧超伝導体」の合成に成功したとする論文と、そのメカニズムについて示した論文の2本を7月27日に発表した。これらの論文は「arXiv(アーカイヴ)」という、誰でも論文を投稿し、閲覧することができるサイトで公開され、まだ当該分野の専門家による査読は受けていない。しかし、世界中で再現実験が行われており、中国のいくつかの研究機関が再現に成功したと主張している。この論文が正しい場合、世界のエネルギー事情を大きく変えるきっかけになるだろう。
通常、金属に電流を流せば熱が発生し、電気エネルギーの一部が失われる。これは電気抵抗があるためだ。ところが金属を冷やしていくと電気抵抗がゼロになる。この状態が超伝導だ。超伝導になれば電気をロスなく送ることが可能になるが、冷やすコストに見合うかが問題だ。そこで安価な液体窒素の温度である77K(−196℃)以上で超伝導になるものを「高温超伝導物質」と呼ぶが、高温と言っても常温よりはかなり低い温度だった。
今回の常温常圧超伝導体は「LK-99」と命名され、化学組成はPb10-xCux(PO4)6O、常圧(大気圧)下で400K(127℃)以下で超伝導になるという。LK-99が常温常圧で超伝導となるのは温度や圧力などの外的要因ではなく、Pb(鉛)をCu(銅)で置換することによって達成される絶縁体–金属転移に起因するわずかな体積収縮による微細な構造の歪みに起因するとしている。
これまでにも何度か「常温常圧超伝導体の合成に成功した」とするニュースはあったが、残念ながら再現できた事例はない。いま、世界各地で行われている再現に各地で成功した場合、同様な体積収縮に基づく超伝導体の探索が世界中で行なわれるはずだ。そうすれば、エネルギーを掛けて冷却する必要なく超伝導となる物質を用い、電気をロスなく送ることができるなど新しい世界が開けてくることだろう。
(写真はイメージ)