増える肥満と肝疾患 岐阜大が若年男性で関係性を調査
肥満の人が増え、肝臓が脂肪で詰まってしまう「脂肪性肝疾患」に伴う肝硬変、肝発癌、心臓血管病などが問題となっている。若い世代での実態や体組成(骨格筋量、体脂肪量)との関係を明らかにすべく、岐阜大学の研究グループが健康診断を受診した男子大学院生335名について調査を行なった。その結果、体脂肪量が脂肪性肝疾患と関連しており、BMIが25未満の者においては体脂肪量に加えて骨格筋量や血清中性脂肪値なども関連していることがわかった。この成果は8月1日付で日本肝臓学会の欧文誌「Hepatology Research」に掲載された。
「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」が世界的に増えており、日本でも今後の増加が見込まれている。近年、脂肪性肝疾患の新概念として脂肪肝と「肥満」、「2型糖尿病」、「2 種類以上の代謝異常」を併発する「代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)」が提唱された。MAFLDは NAFLD の高リスク因子を包んだ概念であるため、肝硬変、肝発癌、心血管疾患の発生リスクが高い患者を効率的に見出せると考えられている。しかし、若い世代における NAFLD および MAFLD の現状と体組成との関係は明らかではなかった。
そこで入学時に、通常の健康診断に加えて腹部超音波検査と生体電気インピーダンス法による体組成測定、握力測定を行い、NAFLDおよびMAFLDの現状と体組成を含む関連因子を調べた。BMIが25以上の肥満の学生は9%(30名)、脂肪肝は全体の17%(57名)、NAFLDは16%(54名)、MAFLDは8%(28名)で、MAFLDの27名はNAFLDでもあった。脂肪肝の者のうちMAFLDでもNAFLDでもない他の原因のものは1%(2名)だった。解析した結果、BMIの値によらず体脂肪量の増加が NAFLD および MAFLD の双方の原因となることがわかった。つまり、BMIが25未満で、「肥満ではない」と判定されても、実際には脂肪が蓄積している「かくれ肥満」も脂肪性肝疾患の原因となる。また、BMIがMAFLD および NAFLD の双方で簡易指標となるが、BMIが25未満の場合は第一にBMI、第二に骨格筋量が影響していた。内分泌代謝異常を代表する血液検査指標を含めて解析したところ、BMIが最も影響しており、BMIが25未満の場合は血清中性脂肪値が最も影響していた。
この研究により、若い成人男性の肥満と脂肪性肝疾患の関係が明らかになった。これにより、個人の状態に応じた対策が取られることで、肝臓の健康を守ることに繋がると期待される。
画像提供:岐阜大学(冒頭の写真はイメージ)