ディスクレシアなど読み書き困難を抱える人に配慮した書体の有効性を証明
大日本印刷(東京都新宿区、以下DNP)と東京工業大学らが文字の読み書き困難を抱える人々に対して開発された「じぶんフォント」の有効性を実証したことを発表した。
「じぶんフォント」は、多様な読み書き特性を有する個々の人々を含めたインクルーシブな読字環境の創出を目指し、ディスレクシアを含む読み書き困難を抱える人々に配慮したフォントとして、DNP・東工大・ファシリティジャポン・リアルタイプの4団体が2022年以降、開発に取り組んできたフォントだ。
ディスレクシアは学習障害のひとつのタイプとされ、全体的な発達には遅れがなく知能能力や教育環境に問題がないにも関わらず、文字の読み書きに限定した困難が見られる症状。文字が崩れて見えたりして素早く理解できなかったり、文字のバランスが取れていないように感じて気分を悪くすることもあるという。学業不振や学校不適応につながることも多く、日本では学齢期児童の約8%、英語圏では約10~15%にこの症状が見られるとされている。
今回の調査は、「じぶんフォント」公式サイトで「じぶんフォント」を含む計7種類の書体を2つずつ比較し、主観的な読みやすさの順位を評価してもらうものとなっていて、5180件の回答が得られた。
調査により、「読み書きを苦手と感じ、かつ文字が動いて見えるなどの視覚的な症状がある」グループ(回答数408件)では、「読み書き困難がない」グループと比較して、「明朝体」が読みやすいと感じる人は少なく、「じぶんフォント どっしりまるご」と「じぶんフォント すっきりまるご」を読みやすいと感じる人が多数という結果が出た。読み書き困難を抱える人々には、文字に丸みがあり太さが一定の書体、文字の底辺が安定しており重心が分かりやすい書体が、より読みやすい可能性が示唆された。
こうした誰にでも見やすく設計されたUDフォント(ユニバーサルデザインフォント)は、2006年に最初に開発された「イワタUDフォント」をはじめとして各メーカーによって発表されており、商品パッケージや文書に使う企業などが徐々に増えている。
今後は、今回の調査結果がより実生活に近い環境で文章を読む場面でも確認できるか、引き続き実証実験をおこなう予定。またいくつかのウェブサイトではユーザーが「じぶんフォント」にフォントを変更してウェブサイトを利用することができるようになっている。
画像提供:DNP(冒頭の写真はイメージ)