麹菌による新たなPET分解酵素の生産に成功 奈良先端大など
奈良先端科学技術大学院大学と月桂冠総合研究所は、麹菌を利用してPET(難分解性プラスチック)を分解する酵素「FAST-PETase」を新たに作りだし、PETフィルムの分解にも成功した。この成果は2023年度日本生物工学会大会で9月4日に発表され、注目を集めている。
ペットボトルなどに用いられるPET樹脂は分解されにくく、環境に悪影響を及ぼす要因となっている。PETについては原料まで戻してリサイクルするケミカルリサイクル技術という方法が確立されているが、PETaseと呼ばれるPET分解酵素を用いたリサイクル技術の開発により、より環境負荷を低減できる可能性がある。新たなリサイクル技術を確立するためには、安定で高活性なPETaseが大量に必要となる。
奈良先端大と月桂冠は2020年から共同研究を進め、これまでの成果として2022年3月には麹菌でPETaseを生産することに初めて成功している。しかし、この時に生産された PETase は働きの弱い「低活性型」であったためその後も研究を継続し、同年10月に「高活性型」の生産に成功した。
今回、研究グループはこれまで開発してきた技術をもとに、熱に対する安定性や酵素の分解活性を向上させた「FAST-PETase」の生産に成功した。この酵素を用いてPETフィルムの分解に取り組んだところ、反応前は丸く透明なフィルムの形状をしていたものが、反応が進むにしたがって表面が白濁しはじめ、部分的に穴が開くなどの様子が観察された。14日間の反応後は、フィルムの外縁部を残してほぼ分解することができたという。
今後は麹菌が生産した酵素の詳細な特性の検証を進め、生産方法の改善に取り組んでいくとのこと。
画像提供:月桂冠(冒頭の写真はイメージ)