宇宙の謎「太陽コロナの過熱問題」に北大がアプローチ

宇宙の謎「太陽コロナの過熱問題」に北大がアプローチ

北海道大学は15日、太陽コロナの内部で働くニュートリノと光の相互作用を理論的に解明し、これによりニュートリノのエネルギーが光のエネルギーに変換されて、太陽コロナに大量の熱を供給していることを明らかにしたと発表した。これにより、長年の謎だった太陽表面よりコロナの方が数百倍高温になる「太陽コロナの過熱問題」が解決された。この研究成果は国際科学誌に掲載された。

ニュートリノは物質を構成する素粒子の一つで、極めて軽く電荷を持たず、何でも通り抜けるという特徴がある。太陽の内部や原子炉の核反応で大量に生成されるが、物質を素通りするため無害とされる。ニュートリノは量子力学的な効果によって光と相互作用するが、その相互作用は極めて弱いものだと考えられていた。

太陽コロナは太陽表面から数千キロの領域に広がる太陽大気である。太陽表面が約6000度なのに対して、コロナは100万度を超える高温のプラズマである。太陽表面の上空にその数百倍の温度を持つコロナがなぜ存在するのかは「太陽コロナの過熱問題」と呼ばれる長年の謎だった。

日食により観察できる太陽コロナ

日食により観察できる太陽コロナ

北海道大学の研究グループは、プラズマ中のニュートリノと光の相互作用を解明し、「電弱ホール効果」という現象を明らかにした。これによりプラズマ中では今まで考えられていたよりも1040倍以上大きい確率で相互作用が起きていることが示された。すなわち、太陽の中心部で作られたニュートリノは、一部がコロナを通過する際に光と軽いニュートリノに崩壊してエネルギーを発生させていることがわかった。

この理論は太陽コロナからの光スペクトルと、太陽からのニュートリノのスペクトルを理論データと比較することで検証できる。前者は太陽観測衛星をはじめとする様々な太陽観測が現在進行中であり、後者は次世代ニュートリノ観測装置として建設が進んでいるハイパーカミオカンデ装置で観測できるという。今後の進展に期待したい。

写真提供:北海道大学(冒頭の写真はイメージ)