全国の中高生がより良い学校づくりを語り合う、ルールメイキングサミット開催
10代の子どもたちに多様な出会いと学びを届ける認定NPO法人カタリバは9月24日、東京都内で「ルールメイキング・サミット2023」を開催した。校則をはじめとするルールメイキングに取り組む中高生が集まり、生徒主体の学校づくりについて考えるイベントで、全国25都道府県44校から中高生約100人が一堂に会し、自身の活動を共有し合った。
カタリバは2019年、学校の校則を題材に、中高生にとって身近なルールを対話的に見直すプロジェクト「みんなのルールメイキング」を開始した。同プロジェクトは現在では全国250校以上に広がり、自治体との連携も進んでいる。ルールメイキングは、立場や意見の違う人たちと対話をしながら納得解をつくるプロセス自体を学びの機会と捉え、「自分の話を聞いてもらえる」「自分たちでルールや環境をつくり変えることができる」という感覚を、学校内での活動を通じて育んでいくもの。髪型や服装、携帯持ち込みに関する校則の見直しから始まり、学校行事や部活動、売店の品揃えなど幅広いテーマについて、自分たちの学校をより良くしていくために生徒主体で考える活動へと発展している。子どもの意見を身近な学校の中で反映していく取り組みとして、生徒主体の学校づくりの一端を担っている事例もある。
サミットの前半は、参加生徒全員が現在学校で取り組んでいるルールメイキングについてのそれぞれの思いや経験を語り合った。学校側と対話ではなく対立してしまったり、他の生徒の関心を得られない難しさを語る生徒もいれば、実際に校則が見直され、生徒自ら考えて行動するというしくみを作り上げた事例も紹介された。
サミット後半では、社会で活躍するルールメイカーのトークセッションの後、生徒それぞれが考えたアイデアを学校でどのように実践していくかについて、民間企業からボランティアで参加した大人からアドバイスを得る場も設けられた。
参加した生徒からは「『より良い学校にする』という最上位目標を決めたことで、対立していた先生とも、目標は同じで手段が違うだけだということに気づき、先生の意図をしっかり理解できるようになった」といった経験が語られた。他にも「何かを変えようとする仲間がいることに気づけただけで、ここにきた意味がある」「分野や境遇が違っても考えや志を共にする人と学ぶ楽しさを得られた」などの生徒の声があった。
それぞれのアイデアを実際に学校でどのように実践していけるか、生徒同士や企業の大人と共に考える様子
また、参加した教員の一人は「大人たちが認める力をつけていかなければならない。認める環境づくりが生徒たちの『やってみたい』を育てていける」と語った。
ナビゲーターとして参加した、熊本大学教育学部准教授で哲学者・教育学者である苫野一徳氏は、「みんながより自由になるために社会を作ろう、そのためにルールを作ろう、という民主的な仕組みは人類の大きな知恵だ。当たり前にあるルールがなぜあるのかを問うことが大きい」と述べた。また、社会で活躍するルールメイカーとして参加した元オリンピック選手の為末大氏は、「『これが嫌だ』から始まるのではなく、『I have a dream』で始まるルールメイキングが大事。『私はこんな未来が良いと思っている、そのためには何を変えたらいいか』を考えていくことが大切だ」と生徒たちを激励した。
ルールメイキングの取り組みを通して、身の回りの校則を超えて日常生活に目を向け、よりよい社会を作っていくために主体的・対話的に行動していける子どもたちが育っていくことが期待される。
画像提供:カタリバ(クレジットのない画像)