低毒な次世代太陽電池材料をロボットで高速探索 大阪大
大阪大学は25日、通常は手動で行う測定装置とロボットを組み合わせた自動測定システムを用いて、有毒元素を含まない次世代太陽電池材料をスピーディーに探索することに成功したことを発表した。この研究成果は米国化学会誌にオンライン掲載された。
現在実用化されている太陽電池はシリコンやガリウムを含む無機半導体で作られているが、さらなる低価格化や軽量化を目指して、溶液塗布プロセスによって室温程度で作製できる次世代太陽電池の開発が世界中で進められている。特に日本発のペロブスカイト太陽電池は、太陽エネルギーの変換効率がシリコン太陽電池に匹敵するまで向上し、実用化に近づいているが、有毒元素である鉛を含むという課題がある。
一方で、比較的低毒なビスマスやアンチモンといった元素から構成される次世代太陽電池の開発も進められている。しかし、溶液塗布プロセスで多くのプロセスパラメータを検討しなければならない点が課題だった。
大阪大学の研究グループは、ロボットを用いた自動測定システムを独自開発し、大幅な測定時間の短縮(従来比約6分の1)と高精度化(従来比5倍)に成功した。測定できるパラメータは太陽電池性能とよく相関する光伝導度信号、光吸収と発光スペクトルの測定、および薄膜表面の形態を観察できる光学顕微鏡測定だ。
この自動評価装置を用いて、セシウム・ビスマス・アンチモン・ヨウ素(Cs-Bi-Sb-I)からなる非鉛太陽電池の組成、添加剤、熱処理温度を変えた計576条件の試料を検討。新たに探索した条件により変換効率を従来の約6倍に向上させることに成功した。また、効率的なプロセスを探索する指針を見つけ、それが鉛ペロブスカイト太陽電池との一致を見た。
今回Cs-Bi-Sb-I太陽電池で得られた変換効率2.36%は、鉛ペロブスカイト太陽電池(~26%)と比べてまだまだ低い値だが、さらなる探索によって効率化できる余地が多い。この研究で開発した自動測定システムによって、今後の研究を加速させていくとのこと。
画像提供:大阪大学