赤い葉色のカタバミ 都市部の高温化に適応か
都市部のヒートアイランド現象に適応するために、カタバミという植物で葉が緑色から赤色になる進化が起きていることが千葉大学等の研究により明らかになった。さらに市民参加型の調査から都市部のカタバミの赤葉への進化は世界各地で起きていることが分かっている。20日付の「Science Advances」誌で発表された。研究グループはさらに調査地域を広げるために、「みんなでカタバミプロジェクト」の参加を呼びかけている。
アスファルトやコンクリートは熱を溜め込みやすいため、都市部ではヒートアイランドと呼ばれる高温化が問題となっている。このような都市の高温ストレスの中で生き抜くために雑草たちが進化していることが指摘されているが、どのような進化が起きているか明らかになっていなかった。カタバミは農地や都市部でよく見られる植物の一つで、通常は緑色の葉をしているが、研究グループは都市部では葉が赤いカタバミが多いことに気が付いた。カタバミの葉の色の変化は都市の高温に適応するための進化かもしれないと考え、この仮説の検証に取り組んだ。
研究グループが東京都市圏の26地点で野外調査をしたところ、実際に都市部では赤い葉を持つカタバミが多いということが分かった。次に、生育環境を揃えてカタバミを育ててみると、高温下(35℃)では緑葉よりも赤葉のカタバミが、より光合成を活発に行い、成長が良かったのに対して、通常の気温では赤葉よりも緑葉の成長が良いという結果になった。この結果から予想通り、都市部で赤い葉のカタバミが多く見られたのは、高温での生育に適応するためであると考えられた。
さらに同じ傾向が他の都市でも見られるのかを調べるために、世界中からアップロードされた9,561枚のカタバミの写真を分析すると、都市部のカタバミは赤葉の割合が高いことが分かり、東京だけでなく世界各都市でカタバミの葉の色が、より高温での生育に適した色(赤色)に進化していることが明らかになった。
植物が高温に適応する仕組みが明らかになると、将来の農作物の品種改良にも役に立つことが期待される。現在、かずさ DNA 研究所を中心に、赤葉の進化の理由を明らかにするために市民参加型のオープンサイエンス「みんなでカタバミプロジェクト」に取り組んでいる(プロジェクト HP: https://sites.google.com/kazusa.or.jp/oxalis/)。
画像提供:千葉大学(冒頭の写真はイメージ)