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歴史とアートがつなげる過去と未来 東京ビエンナーレ2023

923日から開催されている東京ビエンナーレ2023。東京駅を中心としたいくつかの街中でアート作品が鑑賞できる。中には、歴史と現代アートの組み合わせによって、過去を現在につなげるというコンセプトの作品も展示されている。今回はJR日暮里駅をスタートして、谷中・鶯谷エリアと秋葉原駅周辺の作品を紹介する。

まちが教えてくれるまち ラーニング谷中

東京ビエンナーレのインフォメーションセンターもある「未来定番研究所」。未来定番研究所は大丸松坂屋百貨店の創造型マーケティング組織で、5年先の未来に定番となるモノとコトのタネを発見し育てるため、2017年に設立された。

まちが教えてくれるまち ラーニング谷中(西原珉、黑田菜月ほか)谷中のまちのいいところをポストイットで書き込んだ地図や、谷中関連の書籍など、谷中について知れる展示。お茶の間の落ち着いた雰囲気も谷中の魅力を表しているのかも。

建物は築100年以上の歴史のある「銅菊」と呼ばれる日本家屋。もともと銅細工職人が3代にわたって銅細工を作っていた。土間には戦時中に掘られた防空壕もある。2018年3月から未来定番研究所の谷中事務所として使用されている。

銅細工が作られていた当時を思わせる道具たち

ノア・ラティフ・ランプ:Forever Now

未来定番研究所から歩いて15分ほどのところにある、東叡山寛永寺に展示されたノア・ラティフ・ランプの作品。作品の根源的なテーマである人間の生死、時間を砂時計で表している。砂時計の中には「恒河沙(ガンジス河の砂)」が入っており、仏教的世界観に基づく、生命の循環(輪廻転生)、そして個々の人間の持つ時間を遥かに超えた長大な時間について語りかけている。

ECHO works – 回向柱

ECHO works – 回向柱(西村雄輔)

寛永寺の常憲院霊廟勅額門前に置かれた作品。回向柱(えこうばしら)を通して、実際には直接さわれない、さわれなさそうなものとつながり、ここから離れたものや時間、存在へ意識を広げるようなアート作品。

回向柱は長野県善光寺の前立本尊御開帳の際に本堂の正面に立てられる角塔婆のことで、本作品はこれに着想したという。

パブローブ 100年分の服

JR秋葉原駅は若者が集うエリアではあるが、少し足を延ばすと歴史的な建物もある。

秋葉原駅から徒歩5分。会場は明治20年に古着屋として創業した「海老原商店」。創業当時は既製服や反物などを取り扱っていた。建物は1928年に建てられ、2003年に千代田区景観まちづくり重要物件、2020年には景観重要建造物に指定されている。

パブローブとは「パブリック」と「ワードローブ」を組み合わせた造語で、服の図書館のような、誰もが利用できる公共のワードローブのこと。展示されている服は、東京大震災から現在までの100年の間に着た服を一般の人から募集したもので、どのような経緯のある服なのかという説明と共に飾られている。来場した見学者は、服を試着したり借りたりすることができる。この展示を通して、人々が生きてきた100年分の時間や生活文化をこれからの東京へとつなげていくという。

1940年代の国民服。持ち主は兵隊として台湾まで行ったとのこと。

エントランス以外は鑑賞料(一般500円、学生300円)が必要。

ネオメタボリズム/ガラス

秋葉原駅近くの高架下に作られた広い敷地を使った作品。「建築の解体プロセスを設計時になぜ考える事ができないのか?」と作者が問いかけ、まずガラスにフォーカスを当てて作った作品。今までの建築プロセスへの疑問から、これからのサーキュラーエコノミー(原料から生産・消費・リサイクルのプロセス)に新たなアクションを始めようとしている。

 

会期は11月5日まで。アートの力を使って、東京における人と人のつながり、人と地域のつながりを見出し、さらに新しいつながりが生まれることを願って、さまざまな作品が東京のまちに散りばめられている。文化の日、新しいつながりを探してみては?

 

東京ビエンナーレ

https://tokyobiennale.jp/