VRを使ったオンライン臨床実習 認知症へのイメージ変化に効果
大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科の研究グループは、リアルタイムでの通信が可能なVR システムと2D モニターを用いたオンライン臨床実習が、学生の認知症に対するイメージの変化に与える影響を調査した。その結果、いずれの実習方法であっても、学生の認知症に対するイメージはポジティブに変化することが分かった。この成果は「Psychiatry and Clinical Neurosciences Reports」に掲載された。
認知症に対する「偏見」や「差別」(スティグマ)は、対象者の QOL や自尊心の低下、うつ病に繋がる可能性があることから、医学教育においてスティグマの低減は重要とされている。スティグマは、実際に認知症の方と触れ合うことで低減することが知られているが、COVID-19 の流行で臨床実習が制限されたことにより、学生が認知症の方と触れ合う機会を持てず、スティグマ軽減の機会が減少している。
研究グループは臨床実習に近い学習方法としてVR を活用した方法を考案。リアルタイムでの通信が可能なVR システム「AVATOUR」および2Dモニターを用いたリアルタイムのオンライン臨床実習(認知症の方に対する作業療法の見学)を行い、実習前後で認知症に対する態度や知識、認知症の高齢者に対するイメージがどのように変化するかを評価した。調査の結果、VRを用いた実習と2Dモニターを用いた実習、いずれの実習方法であっても、学生の認知症に対するイメージはポジティブに変化することが分かった。
リアルタイムのオンライン実習は学生や実習施設の負担が軽減されるという利点がある。また、VR を用いた実習はよりリアルな臨床実習体験が提供できることから、作業療法施設での実習に向けた事前学習のツールとしても活用が期待される。
画像提供:大阪公立大学(冒頭の写真はイメージ)