冥王星のクジラ模様は、カロンができた際の痕跡か
米航空宇宙局(NASA)の探査機ニューホライズンズが、今年7月に冥王星のすぐそばを初めて通過し、詳細な写真が撮影された。白いハート型の平原が話題になり、またその横に広がる黒褐色の領域(通称クジラ模様)も明らかになった。このクジラ模様は、冥王星の衛星カロンができた際の衝突時の痕跡かもしれない――。日本惑星科学会2015年度秋季講演会で10月15日、東京大学の関根康人准教授らが報告した。
カロンの質量は冥王星の10~15%もあり、カロンの直径は冥王星の51%もある。そのため、地球の月と同様に、カロンも冥王星への巨大衝突によってできた衛星ではないかと考えられている。2005年に米サウスウエスト・リサーチ・インスティチュートのロビン・キャヌプ博士が、シミュレーションでこの可能性を示したが、具体的な証拠はなかった。
関根准教授らは、カロンができた時の巨大衝突によって冥王星表面の氷物質が一時的に広範囲で溶け、表面にあったホルムアルデヒドやアンモニアなどが溶液中で反応を起こし、黒褐色の高分子有機物となったと考えた。そこで、50度、100度、200度の条件下で、各10分、2時間、20時間、8日間と加熱時間を変えて実験した。加熱時間は衝突の激しさに比例する。
その結果、冥王星では50度ほどの温度が8日間に渡って維持されるような巨大衝突時にのみ、褐色の高分子ができることがわかった。さらに、衝突時の様子をシミュレーションしたところ、飛び散った高温の物質は実際のクジラ模様のように赤道に長く広がり、分布する様子が示されたという。ニューホライズンズからの更なる観測データと突き合わせることで、さらに具体的に確認していけそうだ。
画像提供:(冥王星)NASA、(実験写真)関根康人准教授