不登校の要因「先生との関係」が1位 子どもと教員双方に支援を
不登校支援を行うNPO法人多様な学びプロジェクト(神奈川県川崎市)は11日、シンポジウム「不登校当事者の実態とニーズを把握し、 官民共創でつくる効果的な施策とは」を開催した。東京学芸大学と共同で、不登校の子どもや保護者等に対して実施した全国調査の結果を公表し、不登校のきっかけとして「先生との関係」が最多となったことを明らかにした。
増え続ける不登校は30万人に迫る
文部科学省(以下、文科省)の調査によると、不登校の児童・生徒は現在30万人近くに上り、10年連続で増加し続けている。その要因について、同省が教員を対象に実施した調査では、「無気力、不安」が小中学校ともに過半数で最多であることが公表されていた。
今回、NPO法人多様な学びプロジェクトと東京学芸大学が共同で実施した実態調査は、不登校やさみだれ登校(週に何日か休みながら登校すること)の子どもとその保護者を対象として、学校に行きづらくなったきっかけや支援について明らかにした。
不登校のきっかけ1位は「先生との関係」も年代で変化
学校に行きづらいと思いはじめたきっかけについては、「先生との関係(先生と合わなかった。先生が怖かったなど)」が、子どもが36.3%、保護者が43.5%でいずれも最多となった。次いで、「勉強は分かるけれど授業が合わない(授業がわかるけどつまらない、読み書きが苦手、グループワークが苦手など)」が35.2%(保護者は27.0%)、「学校のシステムの問題(価値観が古い、時代に合わない、風土に合わないなど)」が28.3%(保護者は32.6%)となった。
自由記述では、「先生が、いつもピリピリしていて、怒鳴る場面もあり、息子は怯えたり、先生の理不尽な言動に怒ったりしていました」(40代・小6児童の母)、「全部先生が決めて、自分では選べないのが嫌です。(中略)学校はいつも見張られている感じがして緊張する。図工に点数をつけるのはおかしいと思う。学校は忙しくて、時間が足りないです」(10才女児)といった回答があった。
文科省が実施した「公立学校教職員の人事行政状況調査」によると、精神疾患を理由に病気休職した教職員は過去最多の6539人にのぼっていることから、NPO法人多様な学びプロジェクトの代表理事である生駒知里氏は、教員をバックアップする体制の拡充が急務であることを強調した。
一方、19歳以上の不登校経験者に学校に行きづらいと思い始めたきっかけを聞くと、「先生との関係」(42.5%)に次いで「友達との関係(いやがらせやいじめがあった)」が42.3%に上り、年代によって不登校の要因が変化していることがわかった。
同調査は2023年10~12月の期間、さみだれ登校や不登校の子ども(18歳以下)とその保護者、および不登校経験者(19歳以上)、合計2804名に実施した。
安心・安全な環境づくり
ディスカッションも行われた。パネルディスカッションでは、不登校の要因として挙げられた「学校のシステムの問題」に着目し、文科省職員は「学校を居心地悪くさせている原因を見える化していく」と方向性を示した一方で、不登校の子どもを持つ保護者からは「教員がフリースクールに足を運ぶなど、システムよりも学校関係者の不登校に対する姿勢を変えるべき」という声が上がった。また、教育委員会は不登校支援に関する教員研修が必要だとし、教員からは研修等に割く時間を捻出するための業務改善が必要といった意見が挙がった。
今回のシンポジウムを通して、教員の業務が肥大化する中で疲労感や緊張感が子どもにも伝わり、学校の安心・安全性が損なわれているのではないかと感じた。子どもの支援に留まらず、教員や保護者など周囲の大人が、心に余裕を持って子どもに接することのできる環境整備が望まれる。
画像提供:NPO法人多様な学びプロジェクト(冒頭の写真はイメージ)