野生動物の希少行動を自動で撮影できるデバイスを開発 大阪大学

野生動物の希少行動を自動で撮影するAI活用デバイスを開発 大阪大学

大阪大学は17日、野生動物に取り付けることで、その希少な行動をAIで自動的に発見し、映像撮影できるバイオロギングデバイスを世界で初めて開発したと発表した。このデバイスを用いて、野生の海鳥の効率的な飛行や採餌に関わるであろう希少行動の自動撮影に成功した。この研究成果は米国科学誌に公開された。

バイオロギングとは動物に直接取り付けた小型センサロガーデバイスを用いて、動物の生態を観測する手法のことで、研究者が目視観測できない世界を観測することができる。しかし、既存のバイオロギングデバイスでは、バッテリ重量の制約上、映像を常に撮影し続けることは難しかった。例えば500gの海鳥に対しては、行動を阻害しないために体重の5%ほどのデバイスしか装着できず、その結果2時間ほどの映像記録しかできない。この制約のためにバイオロギングデバイスで野生動物の行動の全貌、特に稀にしか見せない行動を捉えることは困難だった。

研究グループは、バイオロギングデバイス上の加速度センサなど消費電力の小さいセンサを用いてデバイス上でリアルタイムに異常検知を行うことで、希少な行動を自動で発見し撮影できるデバイスを開発した。

新潟県粟島に生息するオオミズナギドリを用いた実験では、海中の様子を何度も伺ってから効率的に魚を捕らえる行動および、飛行開始直後に頭を激しく振って体に付着した水分などを除くことで以降の飛行効率を向上させる行動の撮影に成功した。

野生動物の希少行動を自動で撮影できるデバイスを開発 大阪大学

開発したバイオロギングデバイス、オオミズナギドリへの装着の様子、撮影された動画のスクリーンショット。

この研究により、従来の方法では発見・観察が困難だった野生動物の発生頻度の低い希少な行動を自動撮影できるようになった。今後は長期観測が困難な海洋生物や人里に出没する野生動物への適用を予定している。この研究は動物の新しい生態の解明に役立つだけでなく、野生動物との共存や伝染病を媒介する動物と人間社会との関係の解明などにも有効と考えられる。

写真提供:大阪大学