デジタル教科書本格導入を前に相模原市の小中学校で学習効果を実証
大日本印刷(以下、DNP)と相模原市教育委員会らは1月30日、デジタル教科書を活用した共同研究事業の研究成果を発表した。デジタル教科書を活用した授業では、児童生徒の思考時間が増え、考えを可視化することで意見の交流活動が活性化したことなどが明らかになった。
教育現場においてICTツール等を活用したDX化が加速する中で、2019年度より教科書の内容を電子媒体に記録した教材として、「デジタル教科書」が正式な教科書として認められるようになった。今年4月からは、デジタル教科書が小中学校で本格的に導入される。デジタル教科書は、教科書からオンラインで音声や動画にアクセスしたり、教室の大型モニタに接続して情報を共有するなど、さまざまな活用ができる。また、音声の読み上げや文字色の変更など、特別な配慮を必要とする子どもに対応できるメリットもある。一方で、教育・学習上の効果や児童生徒の健康面への影響については、まだ検証されていないことが課題となっている。
相模原市教育委員会、ネットワンシステムズ(東京都千代田区)、DNP、光村図書出版(東京都品川区)、放送大学学園は、2022〜2023年度の期間、授業中のデジタル教科書の成果物・テスト結果等のデータを用いた指導と評価に関する授業実践共同研究として、デジタル教科書を活用した授業方法を開発し、相模原市の小中学校で実証を行った。
同共同研究では、児童生徒の主体的な活動時間や対話を行う活動時間の確保を意識した指導案を作成し、デジタル教科書の操作方法や活用方法について、教員と児童生徒間で学び合う時間を取ってから授業を行った。授業後に中学校の生徒31名にアンケートを取ったところ、87%の生徒が「学習に取り組みやすくなった」と回答した。
黒板の内容をノートに書き取る時間が減ることで、授業中の児童生徒の思考時間が増え、さらに考えを整理する時間が生まれ、その結果、互いの意見を交流させる活動が活性化した。また、デジタル教科書への書き込みがデータとして残ることで、個人の学びの過程が可視化された。こうした書き込みを学習成果物として蓄積・可視化することで、児童生徒が自ら学習を分析することに繋げられることが期待される。
DNPはこれらの成果を基に、教員や児童生徒が学習データを活用できるシステムの開発を行い、2024年度内の本格的なサービス化を目指すとしている。
画像提供:大日本印刷(冒頭の写真はイメージ)