H3ロケット2号機 1号機の失敗乗り越え打ち上げ成功
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日、鹿児島県の種子島宇宙センターから同日9時22分55秒にH3ロケット試験機2号機を打ち上げたと発表した。ロケットは計画どおりに第2段機体を所定の軌道に投入するとともに、打上げから約16分43秒後に約70kgの副衛星「CE-SAT-IE」を分離した。また、第2段機体の地球周回後のデータにより、約5㎏の副衛星「TIRSAT」への分離信号送出、第2段機体の制御再突入の実施、ロケット性能確認用ペイロード(VEP-4)の分離を確認した。
現在日本が運用中のH-IIAロケットが初めて打ち上げられたのは2001年。その後2024年1月までに48機を打ち上げ、6号機を除いてすべて成功と、高い信頼性を備えている。しかし2010年代に入ると、世界中で新しいロケットが続々と登場し、いずれも低価格、高柔軟性などの特徴を持っていることから、より安価なロケットが求められるようになった。そこでH3ロケットは日本の宇宙への輸送手段の自立性の維持と、商業衛星の打ち上げ市場での国際競争力の確保という2つの目標を実現するべく、「柔軟性、高信頼性、低価格」の3つの実現を目指した。第1段メインエンジンには日本独自の「LE-9」を採用。機体全体も大型化するなどH-IIAよりも大きく重い衛星にも対応し、LE-9の基数や固体ロケットブースター(SRB-3)の装着数、衛星フェアリングのサイズの組み合わせで多様な衛星を効率的に打ち上げられるように開発された。
2023年3月7日、H3ロケット試験機1号機が打ち上げられたが、第2段エンジンが着火せず、搭載していた先進光学衛星「だいち3号(ALOS-3)」を軌道に投入できず打ち上げに失敗。三菱重工と共に原因究明に取り組み、原因と考えられる3つのシナリオを特定した。これら3つすべてに対策を施し、さらに背後要因についても分析と対策を図り、信頼性向上策を進めたうえで今回の試験機2号機による”再挑戦”に臨んだ。試験機1号機と同じ「H3-22S」形態(LE-9エンジン2基、SRB-3装着2本、ショートフェアリング)とし、ペイロードにはALOS-3と同等の質量特性を持つロケット性能確認用ペイロード (VEP-4)を搭載し、軌道投入(第2段エンジン第1回エンジン燃焼停止)までの飛行経路は試験機1号機と同様とした。フェアリングには応募メッセージ2,845件を、飛行再開フライトを意味する「RTF(Return To Flight)」の文字に印字して打ち上げられた。
今回の打ち上げの成功について、盛山正仁文部科学大臣は同日行われた記者会見の中で「今後、H3ロケットが、技術を蓄積・成熟させ、我が国の宇宙基本計画の着実な実施に貢献するだけでなく、国内外の多様な打上げ需要を担う素晴らしいロケットとなることを期待しております。」と述べた。
JAXAは今後、LE-9エンジン3基、SRB-3を装着しない「H3-30」形態も飛行実証を計画している。3号機以降のH3は政府系衛星をはじめ、月・惑星探査機、科学衛星、そして国際宇宙ステーション(ISS)や月周回有人拠点「ゲートウェイ(Gateway)」に物資を補給する「HTV-X」など、さまざまな日本の衛星・宇宙機の打ち上げを計画している。さらに商業打ち上げ市場では、三菱重工が移動体衛星通信サービスの大手企業である英国インマルサットとH3による衛星打ち上げを2018年に受注している。
写真提供:JAXA