正月野菜「チョロギ」の短期栽培技術で山間地農業を振興 近大・姫路市
近畿大学は20日、兵庫県姫路市とともに山間地農業の振興に取り組み、シソ科の野菜「チョロギ」の栽培期間を約半分に短縮することに成功したことを発表した。この研究成果は園芸学分野の学術誌にオンライン掲載された。
姫路市の莇野地区では、農業の高齢化が進み放棄地が増えている。新しい野菜を新しい技術で作ることで、産地づくりを進めて新規産業の種を播く目的で、近畿大学と姫路市の共同研究が始まった。
チョロギは、日本ではハレの日の食材としておせち料理に使われる野菜だが、中国では薬用植物として位置づけられている。チョロギの塊茎(地下茎の一部が大きくなったもの)に含まれるオリゴ糖のスタキオースは、腸内環境を整える機能を持っており、日本でも日常の食材としてさまざまな食品への利用が期待できる。チョロギは栽培に手間がかからないが、栽培期間が長く、収穫までに7~8カ月を要することが課題だった。
研究チームは、チョロギのスタキオース含量を維持したまま、栽培期間を短縮する栽培法の開発に取り組んだ。チョロギの発根苗を得るために、塩類濃度の低い培養液と酸素供給を組み合わせることにより、通常は根が出るのに2週間程度かかるところが、1週間程度に短縮できた。これによって、チョロギのウイルスフリー苗を効率良く生産することが可能となった。また、植え付け時期を変えた実験では、通常4月頃に塊茎の植え付けを行うところ、発根苗であれば9月の定植であっても十分な塊茎の生産が可能であることを明らかにした。さらに、この栽培方法によって得られたチョロギのスタキオース含量は、従来の栽培方法と変わらないことを確認した。これらの結果により、従来の栽培方法よりも大幅に作付け時期を遅らせ、約4カ月という短い期間でチョロギを収穫することが可能となった。
この新技術を活用することによって、各地域の主要な作物の裏作としてチョロギの生産が容易になり、より身近なものとして栽培することが可能になるとしている。
画像提供:近畿大学(冒頭の写真はイメージ)