SLIM探査機が月面の越夜に成功 今月下旬に再運用予定
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月26日、SLIM探査機が月面での越夜に成功したことを明らかにし、3月1日に再び休眠に入ったと発表した。厳しい温度サイクルを繰り返すことになるため故障確率は上がるものの、次回の日照(3月下旬)でも再び運用を試みるという。
SLIMは1月20日未明に月面にピンポイント着陸後、太陽電池から電力を得られず、事前に用意していた異常時対応手順に従って各種データを送信後、マルチバンド分光カメラ(MBC)での観測を行ない、送信機温度が上限に達するまでに257枚の画像を送信した。その後、探査機電源はOFFとされた。日照条件の変化に伴い、1月28日夜に再度通信を確立し、MBCによる科学観測を再開。1月31日に着陸地点付近が日没を迎え、休眠状態に入っていた。
月面での夜は地球の暦で2週間あり、月面の温度はマイナス170℃にもなる。このような低温では、例えば部品が載っている板が縮んではんだにヒビが入るなど電子機器が壊れてしまうことが多く、SLIMは越夜できるようには設計されていなかった。しかし、2月25日にコマンドを送信したところ応答があり、SLIMは通信機能を維持しての月面での越夜に成功したことが明らかとなった。月面の昼は110℃にもなるため、この時点ではまだ一部の機器の温度は100℃を超えていたことから短時間の運用のみで通信を終了し、26日に越夜後初めて航法カメラでの写真を撮影した。
25日から29日まで、越夜後の探査機や月面の状況に関する各種データを取得しながら温度状況の改善を待ち、29日にMBCによる科学観測に挑戦。MBCは想定通り起動したものの、越夜の影響のためか正常に動作しなかった。今後、得られたデータ等から次回の機会へ向けて調査を行なっていくという。
画像提供:JAXA(冒頭の写真はイメージ)