白亜紀中期の海洋生物大量絶滅の原因を解明 東北大など
東北大学などは4日、白亜紀中期の海洋生物の大量絶滅の原因は、7回の火山活動の活発化とアジア大陸東部での降水量の大幅な増加だと発表した。この現象は温暖化した地球の未来像を予測するための参考になるという。今回の研究成果は国際学術誌に掲載された。
地球の歴史上で大量絶滅は5回あったとされ、その5回目が白亜紀末に起きた隕石衝突による恐竜などの絶滅である。白亜紀にはそれ以外にも生物絶滅事件は起きており、特に海洋において酸素に乏しい水塊が広域に発達した海洋無酸素事変と呼ばれる現象が8回程度起こっていた。これは大規模な火山活動によって急激な温暖化と湿潤化が生じ、大量の栄養塩が大陸から海洋にもたらされた結果、海洋の富栄養化とプランクトンの大量発生に起因した無酸素水塊の拡大が生じたと考えられている。
8回の海洋無酸素事変のうちで最大規模のものが、今から9450万~9390万年前にかけての60万年間に起こった海洋無酸素事変2と呼ばれている現象だ。引き金になった大規模火山活動は、カリブ海海面下にあるカリブ海台(白亜紀当時は中央太平洋に位置していた)、マダガスカル洪水玄武岩、北極圏巨大火成岩岩石区などが挙げられているが、いずれの影響によるかは、いまだ明らかではない。
東北大学と福井県立大学などの研究グループは、海洋無酸素事変2の期間に堆積した世界で最も厚い地層(蝦夷層群)を、北海道苫前町古丹別川支流の大曲沢川で発見した。
北米やヨーロッパのこの時期の地層は厚さ数m~数10mのところ、大曲沢川の地層は590mに達しており、他地域の地層に比べてはるかに高い時間分解能で海洋無酸素事変2期間の環境変動の解析が可能になったという。
この地層は、アジア大陸の東沖の北西太平洋の半深海底で堆積した泥が固結した泥岩である。その中には海洋のプランクトンや底生生物の化石に加えて、アジア大陸の地表から流されてきた植物の破片や粘土成分も多く含まれており、海洋と陸域双方の環境変動が記録されていた。また、地層の岩石を分析した結果、この時期に7回の巨大火山噴火があり、火山ガスを介して大量の二酸化炭素が大気中に放出され、地球温暖化と一部の地域での極端な湿潤化が起こったことが明らかになった。
さらに、特にアジア大陸東部の降水量が大幅に増加し、大量の栄養塩がアジア大陸から太平洋へと流出した結果、世界中の海洋の溶存酸素が著しく低下した可能性が高いことが分かった。この降水量の増加は、東アジアの植生を裸子植物優勢の森林から被子植物優勢の森林へと一変させたという。
今回の研究結果について、同グループは、アジア大陸東部の降雨の増加が、世界規模の海洋無酸素事変の引き金となった可能性を初めて実証した点で重要だとした。さらに、海洋無酸素事変2での急激な温暖化による全地球規模の環境変動は、温暖化した地球の未来像を予測するうえで参考になるとしている。
画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)
参考記事:恐竜の大型化のきっかけとなった三畳紀末の大量絶滅の実態を解明 東北大など(2022.01.17)