難民の子どもへの継続的な教育支援を 上智大が補習教育の効果検証結果を公表
上智大学は14日、シリア内戦による難民とその受け入れ国であるヨルダンの児童を対象に実施した、補習教育事業の影響に関する調査の結果を公表した。補習教育の結果、安全な環境で行われるインタラクティブな学習によって児童の学力や学習意欲が向上したこと、さらに難民と受け入れ国双方の児童のコミュニケーションが促進されたことが明らかになった。
難民にとって教育は、紛争の勃発や激化の予防、さらに将来の復興や発展の基盤となることから、「未来へのはしご」とも呼ばれている。しかし実際には、難民の子どもの就学は、紛争や家庭の困窮、受け入れ国の地元住民との関係などの影響を受け、避難先の国で教育を継続することは困難とされる。
補習教育事業(remedial educationプログラム、以下「REプログラム」)は、2014年から2021年の7年間、シリア難民と受け入れ国のヨルダンの低学力の児童を対象に実施された。安全な学習環境を提供することに重点を置いたうえで、児童の学力とレジリエンスを養うことを主目的として、それぞれの学習段階やニーズに応じた補習教育が提供された。
REプログラムでは、ディスカッションやブレーンストーミングなどの双方向的な学習方法が採用されたほか、レクリエーションや校外学習など、児童同士の信頼関係の醸成を目的とした活動も行われた。
REプログラム参加者へのアンケートやインタビュー調査の結果、REプログラムで学んだ難民児童は、学校での心理的な安全性が確保され、受け入れ国の児童とのコミュニケーションが促進されただけでなく、学校での成績や学習意欲についても明らかな向上が認められたという。
一方で、難民の学習継続のためには、ホスト国の社会からの理解や協力だけでなく、補習教育の継続的な実施のために、緊急事態の初期段階からのアドボカシーや、関係部署との連携が必要であることが示唆された。
この研究成果は、2023年11月に国際学術誌にオンライン掲載された。論文では、脆弱な立場にある難民の子どもへの教育支援の枠組みを提示。また、教育支援の枠組みと、実際の支援の効果分析結果と教訓を示すことで、将来的に難民児童が就学を継続しやすくなることに貢献できる可能性があるとしている。
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