所有者が不明な土地は日本の24% 不動産の相続登記が義務化

所有者が不明な土地は日本の24% 不動産の相続登記が義務化

4月1日から不動産の相続登記が義務化される。登記簿を見ても所有者がわからない「所有者不明土地」が全国で増加していることから、それを解消する狙いだ。2019年には所有者不明の山林に関する管理制度も新設されるなど、近年土地所有に関して動きが多くみられる。所有者不明土地をめぐる問題と、一連の動きをまとめていく。

所有者不明土地とは

所有者不明土地とは、不動産登記簿に所有者が記載されていない土地や、記載されていても亡くなっていたり、連絡がつかない土地のこと。こうした土地は日本全土の24%にのぼり、九州の面積とほぼ同じである。背景には、これまで相続登記の申請が義務ではなかったことや、都市部への人口の移動により、地方を中心に土地の所有意識が希薄化したことがある。

所有者不明の土地によって生じる問題は様々だ。まず、公共事業や震災後の復旧・復興事業の際、土地の所有者が分からないことで整備や土地利用の合意形成が円滑に進まず、事業の推進が阻害されることがあげられる。また、所有者がいない土地では、管理が適切に行われないことによる近隣住民や施設への悪影響が懸念される。実際に、敷地内の植栽が道にはみ出て交通を阻害する、都市部で野生動物が住み着いたりするなどの問題が起こっている。

政府による具体的な対策

政府はこれらの問題を解消するため2021年、不動産登記法と関連する民法を改正した。この改正に伴い、2023年4月に「相続土地国庫帰属制度」が施行され、相続などで取得した土地の所有権を所有者からの申し出により国庫に帰属させることができるようになった。同年6月には「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」を閣議決定し、財産管理制度や相続関係の規定の見直しを図るなど、所有者不明土地の発生予防と利用の円滑化を進めている。

今回施行される相続登記の義務化には3つの狙いがある。一つ、所有者の探索にかかる時間と費用を削減すること。二つ、公共事業や復興事業の妨げになる土地を減らすこと。三つ、高齢化で死亡者が増加することによる問題の深刻化を防ぐこと。相続人は、不動産(土地や建物)を取得したことを知った日から3年以内に相続を登記することが義務付けられる。4月1日の改正前に相続した不動産も対象となり、相続登記を怠った場合10万円以下の過料が課されることがある。

政府は2025年には登記漏れを防ぐ目的で、特定の人物が名義人となっている不動産の一覧を証明書として発行できる「所有不動産記録証明制度」も新設する予定だ。

所有者不明は森林にも

4月1日からの登記の義務化は森林も該当する。日本の森林面積の約6割は個人が所有する私有林であり、そのうち人工的に針葉樹を植えた人工林の約3分の2は経営管理が不十分となっているおそれがある。また、長年登記されていない森林の割合は32.3%に上り、その割合は宅地や田畑を上回る。所有不明が原因で森林の経営管理に支障をきたし、間伐、伐採等の林業の効率的な施業ができない場合もある。

2019年4月には所有者が不明な森林を市町村が管理できる森林経営管理制度が施行された。制度開始から4年間で約81万ヘクタールの森林所有者への意向調査が実施され、森林整備につながったケースもある。所有者がわかることで森林活用の意向を確認することが可能になる。今回の登記の義務化により、活用できる森林が増えることが期待される。

国土の有効活用に向けて

所有者不明の問題は宅地や森林だけではなく私道にもおよび、補修工事等を行う際の妨げになっている。地方公共団体・事業者向けのガイドラインも見直されるなど、対応が進められている。所有者不明の土地に関わる取り組みは始まったのはこの数年のことだが、国家の財産である土地の適切な管理と有効活用が促進されることで、豊かな国土が作られていくことを願う。

(写真はイメージ)