廃棄物のカニ殻からエレクトロニクス素材を生成 東北大など

東北大学は25日、廃棄物とされていたカニ殻から得られる食物繊維キトサンを、半導体や蓄電池の素材として利用できることが示されたと発表した。通常は廃棄される海産物バイオ素材のエレクトロニクスへの利用が期待できる。この研究成果は、米国物理学会誌にオンライン掲載された。

キトサンはカニ・エビや昆虫の甲殻類、イカの骨、カビ・キノコなどの菌類の細胞壁を構成するキチンから容易に生成される。しかし、これまでは主だった用途が見つからず、廃棄物として扱うしかなかった。

東北大学と東京大学の研究グループはこれまで、絶縁体と認識される紙・セルロースをナノサイズの微細構造体としたセルロースナノファイバーの電気特性を研究してきた。その中で、一年草のケナフを原料とするセルロースナノファイバーに、負電圧領域に電流の電圧依存性が反転する挙動、いわゆるn型半導体の諸特性を既に見出してきている。研究グループは、分子構造が植物性セルロースに類似し、セルロースに次いで地球上で2番目に多いバイオマス化合物であるキトサンに注目した。

紅ズワイガニの殻から作られた、キトサンナノファイバーを原料としたデバイスを作製して電気特性を計測したところ、n型半導体の特性を示した。また、ケナフではなかった高速充電性も見出された。これにより、液漏れなどの課題を克服できる固体型蓄電体を提供できるものと考えられる。

半導体分野や蓄電分野において、キトサンのような天然由来の海産物バイオマス素材が利用できると、廃棄物が低減され循環型社会構築に貢献できるとともに、地産地消に根差した新たな産業創出も期待できるとしている。

(写真はイメージ)