子どもがミニカーに乗ろうとする「スケールエラー」、言語発達が関連

子どもがミニカーに乗ろうとする「スケールエラー」、言語発達が関連

大阪大学をはじめとする研究グループは、「ミニカーに乗ろうとする」「人形の靴を履こうとする」など幼児に特有の行動である「スケールエラー」が、発達のどの時期に最もよく見られるのかを、大規模データの解析により世界で初めて明らかにしたことを発表した。また、言語発達における動詞や形容詞の習得が、特にスケールエラーの生起と密接に関わっている可能性を併せて発表した。研究成果は3月28日に学術誌に掲載された。

ミニカーに足を入れて乗り込もうとしている18ヶ月児(写真=江戸川大学 石橋美香子講師提供)。

スケールエラーとは幼児が非常に小さな物体に自分の身体を当てはめようとする現象のことで、2004年に学術誌で報告されて以来、発達心理学者をはじめ、工学、脳科学などのさまざまな分野の研究者に関心をもたれていた。しかしスケールエラーを示す子どもと示さない子どもがいること、観察場所によってスケールエラーが生じる頻度が異なることから、幼児期のどの時期にピークを迎えるのか研究者によって主張が分かれていた。

研究グループは、過去の複数の研究において日本や海外で収集された528名分のスケールエラーデータを統合し、これに「ゼロ過剰ポアソンモデル」という統計モデルを当てはめることによって、スケールエラーの発達的変化をより適切に記述することを試みた。その結果、研究室での観察では生後18ヶ月ごろに、保育園での観察では生後26ヶ月ごろに、それぞれスケールエラーが最も観察されやすいことが明らかになった。

さらに、スケールエラーとの関連が指摘されていた言語発達について、それぞれの子どもの名詞や動詞、形容詞の語彙数と、スケールエラーの生起との関連を探った。その結果、「靴」「車」などの具体的な名詞の発達よりも、「履く」「乗る」などの動詞や、「小さい」「大きい」などの形容詞といった、より抽象的な単語の発達に伴ってスケールエラーが生じる可能性を見出した。

これらの結果から、スケールエラーという現象が単なる「おかしな行動」なのではなく、子どもが抽象的な能力を発達させていく過程で生じる「発達的に意味のある行動」であることが示唆された。このような研究は、「子ども独自の世界観」の理解につながる。抽象的な認知能力の発達メカニズムが、今後さらに解明されていきそうだ。

写真提供:大阪大学(冒頭の写真はイメージ)