量産化に繋がる全固体リチウムイオン電池を開発 名工大

名古屋工業大学は12日、フッ化物固体電解質を用いた全固体リチウムイオン電池を開発したことを発表した。この電池は極めて安定に動作し、高性能化や量産化に繋がる重要な成果だという。この研究成果は米国化学会誌に掲載された。

2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するために、充電して繰り返し使える次世代二次電池の研究が進んでいる。現在最も普及しているリチウム(Li)イオン二次電池を改良して、軽量化、電池性能向上、安全性向上を図るために、さまざまな原理のものが研究されている。そのうち、リチウムイオン電池の電解質を固体電解質に置き換えて、安全性を高めようとするものが全固体電池だ。さらに、液体電解液には溶解してしまって使えなかった高容量な電極材料も使用できるため、液体電解質を用いた電池では実現できなかった、電池の高エネルギー密度化が達成できるとも期待されている。

固体電解質には、Liイオンが結晶中を高速で移動できる構造で、さらにLiイオン伝導度が高いことが要求される。また、正負いずれの電極と接しても電気分解せずに安定であること、固体であっても電極と緻密に接触するために適度に柔らかいことが必要である。さらに、大気に触れても安定である必要がある。

名古屋工業大学と日本ガイシの研究グループは、フッ化物材料Li3AlF6に着目した。これは氷晶石と呼ばれ、アルミニウムの精錬に用いる材料だ。大気中で安定ではあるが、これまではLiイオン伝導度が低いことが問題だった。

研究グループは、Li3AlF6をLi2SiF6とボールミリングという手法で粉砕して原子レベルで混ぜ合わせ、Liイオン伝導度を3×10-5 S/cm(@室温)まで向上させることに成功した。Liイオン伝導度が向上したのは、二つの材料が原子レベルで混合した結果として、Liイオンが動ける隙間が形成されたためではないかと推測している。また、この混合材料はほどよく柔らかい材料であって、プレス成型のみで正極・負極と緻密な界面を構築できて、焼き固める必要がないという利点もある。

この研究により、これまで着目されなかったフッ素化物が固体電解質の材料として優れた特色を持つことを示すことができた。今後は、Liイオン伝導度向上のメカニズムを解明しながら材料を改良していくとしている。

図(a): Li3AlF6-Li2SiF6 (Si: 20 mol%)を固体電解質に用いた全固体リチウム電池の充放電測定結果 (b): 充放電サイクル毎の放電容量(青丸)とクーロン効率(白丸)

画像提供:名古屋工業大学