培養液温度の加温でレタスの収量向上 植物工場の生産性UPへ 東大
東京大学大学院農学生命科学研究科の林蒼太大学院生と矢守航准教授らは、人工光型植物工場の養液栽培において、レタスを育てる培養液の温度を室温に対して3℃加温することによって、生育促進が促進するとともに、レタスに含まれるカロテノイドやビタミンCなどの機能性成分が向上することを明らかにした。
今回の研究成果により、植物工場において作物の生産性と機能性成分を増産させる、新しい栽培法の開発に貢献することが期待される。
近年、人工光型植物工場は、病害虫から隔離した環境で無農薬栽培を可能にする都市型農業として期待されている。植物工場では栽培棚を多段にして、面積当たりの収量を増やすことで空間を有効活用しているが、より生産性を高めるために、植物の環境への応答の仕組みを解明して、それを有効に活用する技術の開発が必要だった。
すでに栽培時の室温に関する研究は数多くあり、室温が低い場合や高い場合は作物の生産性が低下することは知られている。一方で、培養液温度(根域温度)に関する研究は少なかった。
同研究では、循環式の場養液栽培システムを用いて、室温17℃、22℃、27℃、30℃の4条件下でレッドリーフレタスの栽培を行い、すべての条件下で培養液を3℃加温することによって、収量が増えることが分かった。
また、機能性成分であるクロロフィルやカロテノイド、アスコルビン酸(ビタミンC)が向上することも明らかになった。これは、培養液を加温することで、根からの養分の取り込みが促進され、さらに根の代謝が活性化されたことによるものだという。
同研究成果により、植物工場において、作物の生産性と機能性成分を増産させる新しい栽培法の開発に貢献することが期待される。また今後は最小の資源とエネルギーの投入で、最大の収量と品質を得るシステムを確立するとともに、環境負荷を最小限に抑える技術開発を進めていくとしている。
同成果は、4月16日付けでFrontiers in Plant Science誌に掲載された。
画像提供:東京大学(冒頭の写真はイメージ)