日本人の高血圧に所得による健康格差、東京医科歯科大

日本人の高血圧、所得による健康格差を指摘 医科歯科大

東京医科歯科大学の研究チームは、日本人の高血圧の健康格差について調査した。ビッグデータを用いて所得と高血圧の関連性を分析し、格差が経年的に拡大していることと肥満などが修正可能な要因であることを明らかにした。国際科学誌Hypertension Researchオンライン版に発表された。

健康格差とは、所得などによる人々の健康の違いを指しており、政府は「健康日本21」で、健康寿命の延伸と健康格差の解消を目指している。日本では高血圧の人が多く、公衆衛生上の大きな問題とされている。健康に関わる行動の違いが高血圧の健康格差に影響を与えている可能性があるが、最近の研究は少なく、解析方法も古典的だった。そこで2009年から2015年までに健診を受診した40~74歳、延べ1億人を超えるデータについて調査した。

その結果、低所得者層の方が高血圧の割合は高いという健康格差が認められ、健康格差は経年的に増加する傾向がみられた。また降圧薬を服用していない人の方が健康格差は大きかった。修正可能な4つの要因(肥満、運動不足、喫煙、飲酒)と所得ごとの有病率の関係を見ると、肥満は所得が低いほど有病率が高く、運動不足は所得によらず有病率が高くなっており、喫煙と飲酒は男性では所得が低いほど有病率が高い傾向があるが女性では逆に所得が高いほど多い傾向が見られた。男性は飲酒と肥満、女性は肥満が格差との関連を強く示しており、次いで男女とも運動不足が経年的に格差への影響を増していた。降圧薬を服用している女性では喫煙も格差への影響が高かった。

これらの要因を改善できれば、高血圧の健康格差の縮小に繋がると考えられる。経年的に高血圧の健康格差が増えている中で、格差への対策が求められる。経済的に余裕のある人だけが改善する対策ではなく、職場での健康的な食事の提供や、禁煙や禁酒につながる税制、運動する余裕ができる勤務時間など、人々を取り巻く環境へのアプローチが大切だろう。

(写真はイメージ)