九大、膵臓がんの3D培養技術を確立 個別化医療実現へ前進

九州大学は4月30日、膵臓がんにおける3D培養法「オルガノイド」技術を確立し、サブタイプ分類と治療後の改善度予測に成功したと発表した。これにより、患者一人一人に合わせた迅速かつ適切な治療法の提供が期待できる。同研究結果は科学雑誌Journal of Gastroenterologyに掲載された。

膵臓がんは、早期発見・治療ともに難しく、5年生存率が9%台の難治性がんの1つである。遠隔転移が起きるため、治療には手術と抗がん剤などの化学療法を組み合わせて行われる。治療効果を最大限上げるためには、患者ごとに異なる薬剤反応性を見極め、適切な薬剤を投与する必要がある。

近年、網羅的な遺伝子解析の結果、薬剤反応性や治療後の改善度(予後)は、がんを詳細に分類したサブタイプと相関があることが分かってきた。ただ、患者から採取した検体を遺伝子解析すればサブタイプ分類が可能ではあるが、解析には通常2ヶ月かかるため、臨床現場で迅速な薬剤投与ができない課題があった。

九州大学の研究グループは、今回、膵臓の腫瘤から抽出した検体から「膵がんオルガノイド」を作成し、そのサブタイプ分類と薬剤応答を検証した。オルガノイドは培養環境を生体に近づけた試験管中で培養した細胞組織で、3D構造を持つ実際の臓器に近い特徴を再現でき、IPS細胞などの移植治療にも応用されている。

同グループは作成したオルガノイドの形態から、僅か1〜2週間で腺管構造のGLタイプと密集増殖するDPタイプのサブタイプ分類に成功。薬剤試験の結果、DPタイプはGLタイプと比較して化学療法の効果が乏しく、予後が優位に不良であることを示した。さらに、予後不良なDPタイプも特定の分子標的薬(ERK阻害剤)と併用することで化学療法の効果が改善することを明らかにした。

この結果により、同グループは遺伝子解析では2ヶ月を要するサブタイプ分類を1〜2週間に大幅短縮し、患者毎のサブタイプ分類と治療効果予測に基づく最適かつ迅速な薬剤投与が可能になるとした。

(写真はイメージ)