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海洋性光合成細菌バイオマスを持続可能な窒素肥料に 理研など

理化学研究所は11日、破砕・乾燥処理した海洋性の非硫黄紅色光合成細菌のバイオマスが、作物栽培の窒素肥料として利用可能なことを明らかにしたと発表した。既存の窒素肥料に替わる持続可能な窒素肥料の開発に貢献することが期待できる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。

植物の成長には窒素が不可欠だが、空気中の約8割を占める窒素を植物の利用できる形にできるのはマメ科の植物の根に共生する細菌くらいである。1910年代からハーバー-ボッシュ法によって工業的に無機肥料が合成できるようになったが、無機肥料の製造と使用は環境へ多大な負荷をかけている。過剰に施肥され余剰となった無機窒素は環境中へ流出し、一方で炭素が供給されないため土壌の有機態炭素を枯渇させる。また土壌中の余剰窒素は温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)へと変換され、農業分野からの排出の一因となっている。環境負荷を小さくするためには、炭素(C)と窒素(N)の比(CN比)が低い有機肥料の供給が持続的に求められる。

理化学研究所、京都大学、科学技術振興機構の共同研究グループは、窒素と二酸化炭素(CO2)を固定できる海洋性の非硫黄紅色光合成細菌であるRhodovulum sulfidophilumに着目した。これを破砕・乾燥処理したバイオマスは11%(重量比)もの窒素を含有し、約4.7という低いCN比を持つ。このバイオマスの肥料としての利用を検討するために、植物の発芽と生育における影響を調べた。コマツナを用いた解析の結果、無機肥料の4倍量に相当する量を用いても発芽と生育に悪影響を及ぼさなかった。無機肥料と比較して窒素がゆっくりと放出されるため、低温・高温いずれの栽培条件においても無機肥料の2倍の施肥により無機肥料と同等の生育を示した。

この研究によって、Rhodovulum sulfidophilumの天然の窒素固定能力を利用した高窒素含有有機肥料が、持続可能な代替手段として環境と食糧安全保障の両方の懸念に対処する上で有望であることが示された。従来使用されている堆肥のような有機肥料に比べてN2OとCO2の排出量が少ないと予想されるため、長期的には、この肥料は農業に大きな変化をもたらし、農業が環境に与える影響を軽減する可能性がある。

今後は、培養規模の拡大、汚染のリスクと保存可能期間の評価、異なる温度下での効果のばらつきなどの潜在的な課題を克服し、無機肥料の商業的代替物としての適性と経済性を評価していくとしている。

肥料として用いる光合成細菌の破砕・乾燥処理と植物(コマツナ)への取り込み

画像提供:理化学研究所(冒頭の写真はイメージ)