微生物活用による鉱山廃水処理システムを開発 秋田県立大学
秋田県立大学は3日、微生物を活用した鉱山廃水処理システムを開発したと発表した。低環境負荷で低コストの新しい坑廃水処理技術の構築が期待できる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。
休廃止した鉱山で発生する鉱廃水は有害金属を含むために、一般的には中和剤を用いた処理が行なわれる。この処理には多くの薬剤やエネルギーの投入が必要で、自然の浄化作用を利用した環境負荷が低く低コストの処理技術の開発が求められている。坑廃水中に含まれる主要な有害金属の一つであるマンガン(Mn)は最も処理が難しい金属とされているが、Mn酸化細菌と呼ばれる微生物は、Mn(II)を酸化して不溶性のMn(IV)酸化物にするため、坑廃水処理への適応が期待されている。しかし、今まで知られていたMn酸化細菌ではその栄養となる有機物を供給する必要があることが課題となっていた。
秋田県立大学の研究グループは、2021年に休廃止鉱山の坑道内に処理装置を設置し、Mn酸化細菌を活用した坑廃水処理技術の開発と現地試験を行ってきた。その結果、有機物を供給することなく12時間の処理をすることで、20mg/LのMn(II)イオンに対して98%以上の除去率を達成することができた。同時に鉱排水に含まれていた亜鉛(Zn(II))イオンも98%以上除去された。
研究グループがMn酸化に寄与する微生物を特定するために培養を行ったところ2種類の細菌群が得られた。一つ目の細菌群は、金属由来の電子を直接細胞に取り込んでエネルギー代謝を行う機能と、二酸化炭素を固定して有機物に変換する機能を持っていた。このような機能を持つ細菌がMn除去処理に寄与するという報告は今回が初めてである。二つ目の細菌群は一つ目の細菌群が生成した有機物を用いて増殖してMn除去に関与していた。
今回の研究で有機物供給を必要としないMn酸化細菌による鉱廃水処理が可能であることが明らかになった。今後は装置のスケールアップやガイドライン作成により実用化に向けての展開を行っていく。また、今回明らかになった電子取り込み型の細菌群について詳細に解明することで、坑廃水処理システムのさらなる効率化が期待できる。
画像提供:秋田県立大学(冒頭の写真はイメージ)