ゼロエネルギー消費住宅を保証する太陽光パネルと蓄電池の投資最適化手法を開発

ゼロエネルギー消費住宅への移行促進に向けた設備投資の最適化手法を開発

東京工業大学、早稲田大学、富山大学は16日、ゼロエネルギー消費住宅を保証する太陽光パネルと蓄電池の投資最適化手法を開発したと発表した。これは工学と経済学という異分野の知見を融合した文理共創研究を通して社会的課題の解決を図る取り組みである。この研究成果は国際学術誌に掲載された。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、高性能な断熱素材や省エネルギー設備を備え、太陽光等の再生可能エネルギーを使用することで、年間のエネルギー消費量をゼロまたはマイナスにする住宅のこと。2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」実現のためには、住宅においてはZEHへの移行促進が大事な鍵となる。しかしZEH移行促進に向けては、天候や日照時間の影響による太陽光発電量の過不足を補うための蓄電池の導入が必要となることと、それによる住民の経済的負担が大きな障壁となっていた。

東京工業大学、早稲田大学、富山大学の研究グループは、経済性とZEH達成を両立する、太陽光パネルおよび蓄電池に対する投資最適化手法を開発した。本来の問題は、一般には制約付き非線形最適化問題となるため、最適解の導出に多大な計算時間を要する。研究グループは、蓄電池の充電量推移について簡単に計算が可能になる変換手法を考案し問題を解決した。

この手法の効果を検証するため、福岡県北九州市城野地区の実際の住宅群電力データを用いて試算を行った。その結果、適切な電力価格設定によって設備投資を行うと、住宅の電力に関わる経済的費用が平均約35%削減される可能性が実証された。また、再生可能エネルギー由来の発電量が消費電力量を上回るという、ZEH条件を達成できた。さらに、地域での蓄電池共有に基づく設備投資では、経済的費用が約40%削減され、少ない太陽光パネル面積で地域レベルのZEH実現が可能であることが示された。

この研究により、蓄電池共有と適切な電力価格の設定を実施すれば住宅のネット・ゼロ・エネルギーを達成可能であり、それが経済的にも実現可能な目標となりうることを示した。これが家庭部門の省エネルギー化に対する住民の視点での設備普及促進策につながるものであり、それを通じて電力分野における経済性を考慮したカーボンニュートラル実現や、持続可能な社会を目指した今後の発展に貢献できる。

今後は、今回開発した最適化手法を用いた太陽光パネルおよび蓄電池の投資シミュレータを開発し、ZEHへの円滑な移行促進に向けた住民の判断材料として活用する形で、成果の社会実装を目指すとのこと。

住宅群電力データを活用した、開発した投資最適化手法の効果検証結果

画像提供:東工大(冒頭の写真はイメージ)