アンモニア固体を常温で安定化 水素キャリアとして有望

兵庫県立大学は25日、低温で凍結して生成するアンモニアの固体を、世界で初めて常温においても安定に存在させることに成功したと発表した。常温で安定した固体アンモニアを水素貯蔵物質として活用することが期待できる。この研究成果は英国王立化学会誌に掲載された。

2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するために、化石燃料に代わるクリーンなエネルギーとして着目されているのが水素だ。気体のままでは貯蔵・運搬の効率が低い水素を、省エネルギーで貯蔵・運搬できる水素キャリアが求められている。

水素キャリアとして、アンモニア(NH3)がある。液化が容易なため輸送や貯蔵がしやすく、アンモニアのまま直接燃焼させることも可能で、燃焼時にCO2を排出しないという特徴を持つ。しかし、アンモニアは気体と液体の双方ともに危険な劇物であり、アンモニアをエネルギー源として普及させるためには、安全な貯蔵・運搬法を開発することが不可欠だ。

アンモニアは-78℃以下で凍結して固体の結晶となる。固体のアンモニアは無臭で安全なため、研究グループは、アンモニアの固体を常温においても安定に存在させることを目標にした。

研究グループは、アンモニア固体をホウ酸ガラスマトリックスの中に閉じ込めることができれば、本来気体となる常温であっても固体として安定になる可能性があると考えた。そのための方法として、保存食品の製造法として知られるフリーズドライ法を応用した。アンモニア水溶液中に酸化ホウ素(B2O3)を溶解させたものを真空排気して凍結させたところ、ホウ酸ガラスマトリックスにアンモニア固体を閉じ込めることができた。この凍結アンモニアは52℃まで加熱しても固体を維持することがわかった。

今回の研究成果は、水に例えれば100℃の沸騰したお湯に投入しても解けない氷を作ったことに匹敵する発見だとしている。今後は、固体アンモニアからより低い温度で水素を分離回収することを目指しているとのこと。

ホウ酸ガラスマトリックスに閉じ込めたアンモニア固体の常温における外観写真

画像提供:兵庫県立大学