微生物による水田メタン排出削減 ゲイツ財団が5億円の研究助成

茨城大学は9日、農学部の研究者を代表者とする水田のメタン排出量削減を目指す研究プロジェクトに、米国ビル&メリンダ・ゲイツ財団より約5億円の研究支援が行われることが決定したと発表した。同プロジェクトは、インド・コロンビア・ドイツの大学・研究機関とともに取り組む国際プロジェクトとして、8月に始動したもの。

温室効果ガス排出削減対象として、二酸化炭素に次いでメタンへの注目度が高まっている。メタンは温室効果が強く、気候変動に与える影響リスクが同量の二酸化炭素の約27倍とも言われている。また、生態系から発生するメタンの約4割は水稲や畜産などの農業分野から排出されている。東南アジア、南アジア、ラテンアメリカといった地域の小規模農家では、メタンの大きな排出源となるような伝統的な水稲栽培がさかんに行われている背景がある。

水田のメタン削減という課題解決のために、研究グループは微生物の活用に着目した。KH32Cというバクテリアの株をイネの種子に接種してから栽培すると、水田土壌が低メタン生成・高メタン消費型へと変動することが確認された。無施肥および窒素施肥条件下でイネの収量を維持したまま、メタン排出量をそれぞれ約20%削減できた。

今回のプロジェクトでは、今後3年間の計画で、KH32Cなどの微生物をイネの栽培体系に導入することによるメタンの排出削減などの効果を、アジア・ラテンアメリカの多様な条件下で実証する。若い研究者・技術者の育成も進めながら技術の普及を図り、将来的には世界の水田から発生するメタンを3%以上削減することを目標としている。

画像提供:茨城大学(KH32C導入の実証実験の様子)