ムール貝からヒントを得た医療用水中接着剤を開発 東北大

東北大学は11日、ムール貝からヒントを得て、水中で使用できる接着剤を開発したことを発表した。医療デバイスを生体表面に接着して、生体シグナルの計測などに利用できる。この研究成果は、材料科学分野の国際専門誌にオンライン公開された。

水中で使える接着剤は濡れた表面に材料を結合することを可能にし、医療機器を生体表面に接着したり止血したりすることなどに役立つ。その一方で、強すぎる接着剤は、剥離の際に生体組織も傷つける可能性があるため、湿った環境で強い接着を保ちながらも、容易に取り外せることが望まれる。

自然界にはフジツボやタコなどの優れた水中接着性を持つ生物が存在しており、生物からヒントを得た接着剤は医療や産業で大いに役立つ可能性がある。ムール貝は足糸の接着タンパク質によって海中の様々な表面に強力に接着できる力を持ち、また外部から刺激を感じた時には素早く表面から離れることもできる。

研究グループはムール貝に着想を得て、「カテコール基」という化学構造を多く含んだハイドロゲル(水を大量に含むことができるゲル状の物質)を設計した。さらに温度応答性を付与することで、脱着可能な水中接着剤を開発した。この水中接着剤は温度で接着性を切り替えることが可能で、体温以上で強く接着し、低い温度では容易に取り外せる特性を持つ。体温以上の温度と体温以下の温度での接着力は1000倍以上の差を示した。

この水中接着剤が有する温度による接着力の差は、デバイスと生体組織の安定した接合だけでなく、容易な剥離を可能にする。そのため、生体電気信号のモニタリングや、創傷治癒などの医療用途に貢献することが期待できる。

設計した温度応答水中接着性ハイドロゲルの構造。ムール貝と同じカテコール基を有する上に、温度応答性が付与されている。

画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)