白神山地の植物由来の乳酸菌が特許取得 肝機能改善効果を確認
弘前大学は22日、白神山地に自生する樹木「キハダ」から分離した新規乳酸菌「白神の森乳酸菌」について、培養法や肝機能改善などの機能性の特許を取得したと発表した。「白神の森乳酸菌」を用いた食品や化粧品が今年度中に数社から販売開始される予定だ。
白神山地は青森県南西部から秋田県北西部にかけて広がる約13万haの広大な山地帯で、1993年にユネスコの世界自然遺産に登録されている。弘前大学では白神山地の生物や生態学、遺伝資源の利活用に関する研究が進められているが、白神山地は人為的な影響をほとんど受けていない山林地域が多く、これまでに新規の微生物を多数分離している。
同大農学生命科学部の殿内暁夫教授は白神山地の植物から乳酸菌を分離する研究を進め、ミカン科の落葉高木であるキハダの葉の表面から新規の乳酸菌を分離することに成功し、L8菌株と命名した。乳酸菌は糖質を分解して乳酸を産生する細菌の総称で、整腸作用、免疫調節作用、アレルギー抑制作用などの効果がある。乳酸菌は乳など動物から分離された動物由来のものが大半で、今回のように植物から分離されることは稀だという。
今回、肥満に関与する疾患の予防作用を確かめるため、高脂肪食と共にL8菌株を含む飲料をマウスに投与する実験を行った。その結果、L8菌株に内臓脂肪重量を抑える働きや肥満によっておこる肝臓での炎症を予防する働きなどがあることが示された。L8菌株の肝機能改善作用や培養法についての特許申請し、2024年6月に特許が正式に登録された。
今後、年度内には「白神の森乳酸菌®L8菌株」を使った食品や化粧品などの製品が販売開始される予定となっている。製品の売り上げの一部は白神山地の環境保全活動や、地域資源の利活用に関する研究支援金として活用される予定。
写真提供:弘前大学(冒頭の写真はイメージ)