職場ストレスが高いほど体重が増加 阪大がストレスチェック追跡調査
大阪大学の研究グループは、学内1万人強のストレスチェックの追跡調査により、「心身のストレスが高いほど体重が増加する傾向にある」ことが明らかになったと発表した。体重増加は肥満リスクを高めるため、肥満予防へのストレスチェックの利活用が期待される。
労働安全衛生法の改正により、従業員50人以上の事業所では2015年12月から全従業員への年1回以上の「ストレスチェック」の実施が義務付けられている。ストレスチェックの質問内容は、仕事のストレス(17問)、心身のストレス(29問)、周囲のサポート(9問)の計55問からなり、厚生労働省の労働安全衛生調査(2023年度)によると、全労働者の80%以上が「職場でストレスを感じる」と報告している。
これまでも職場における心身のストレスが体重増加のリスクである可能性が示唆されていたが、大規模集団を長期間追跡した研究報告が無く、その関連性は明らかではなかった。
今回、大阪大学大学院医学系研究科の大学院生松村雄一朗さんと大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの山本陵平教授らの研究グループは、2016〜2021年度に同調査と職員検診を受けた教職員10036人を2022年まで追跡し調査を実施。職場でのストレスと体重増加の関係性をビッグデータ解析で明らかにした。ビックデータ解析とは大量のデータに基づいた解析手法で、個人の主観や偏見を減らし、客観的に物事を分析できる点が特徴。また、体重の増加有無は調査期間中に体重が10%以上増えたかどうかで判断した。
その結果、心身のストレス反応(不安、ゆううつだ、眠れないなど)が低いグループ(Q0-49:下位50%)と比べ、高いグループ(Q75-89:上位75〜89%、Q90-100:上位90〜100%)では、体重が増えるリスクがそれぞれ1.3倍、1.4倍高いことが分かった。一方で、仕事のストレス(失敗、仕事量が多い、対人関係)と周囲のサポート(相談相手の有無)には、体重増加リスクとの関係性は見られなかったという。このことから、職場でのストレス反応が高い人ほど体重増加のリスクが高いことが明らかになった。
同研究グループは、この結果が職場環境改善によるストレス軽減が肥満予防に繋がる可能性を示唆。職場でのストレス管理が従業員の健康にとって重要だと示しているとし、今後、職場でのストレス対策の重要性について議論が高まることが期待されると述べた。
よく耳にする「ストレスがたまると(暴飲暴食が増えて)体重が増える」という現象が、単なる思い込みではないことが明らかになったわけだが、職場のストレスを減らすことは肥満リスクの低減にもつながることから、事業者はストレスを低減する施策を講じることが大切だろう。
画像提供:大阪大学(冒頭の写真はイメージ)