市民投稿写真から海洋生物の新たな共生関係を解明 琉球大学
琉球大学は11月18日、市民科学プラットフォーム「iNaturalist」に投稿されたサンゴ礁でのタツノオトシゴの写真から、ゴカイの仲間の新たな分布と行動を明らかにしたと発表した。この研究成果は国際学術誌に掲載された。
サンゴ礁には多様な生物が共生しているが、その生態はまだよくわかっていないものが多い。サンゴ礁に生息する生物、例えばタツノオトシゴの一種である「ピグミーシーホース」は観光業での人気が高く、ダイバーによる水中写真も多い。しかし、これを活用した研究は行われていなかった。
iNaturalistは生物の多様性を記録するためのクラウドプラットフォームであり、自然愛好家のソーシャルネットワークの場として活用されている。これは、生態系への関心を深め、身の回りの生物に関する教育の場を提供することを目的として作られたもので、科学研究や生物保護活動を促進する狙いもある。
研究グループは、iNaturalistの写真データ(研究グレードの写真652件)を解析した。タツノオトシゴと八放サンゴ、さらに共生する多毛類ハプロシリス・アンソゴルジコラについて調査した。その結果、タツノオトシゴが写り込んだサンゴの画像にて、ハプロシリス・アンソゴルジコラの生息痕跡や巣穴・トンネルの構造を観察することができた。この多毛類の沖縄や高知の海域での確認は、1956年の新種記載以来68年ぶりとなる。
さらに、この多毛類がサンゴとタツノオトシゴと共に共生し、インド太平洋全体に広く分布している可能性があることがわかった。また、この多毛類がサンゴの体表を清掃し寄生虫や老廃物を取り除く行動も見られた。さらに特定の状況下では、サンゴを守るために攻撃的行動を見せることも明らかになった。
この研究成果によって、多毛類ハプロシリス・アンソゴルジコラと八放サンゴおよびタツノオトシゴの共生関係に関する理解が進み、サンゴ礁の生態系の多様性を守り、絶滅危惧種のタツノオトシゴの保護にもつながると期待される。また、市民科学が学術研究の補完的役割を果たす大きな可能性も示されている。今後はさらなる詳細なデータを基に、これらの共生関係の維持メカニズムや相互作用を調査する予定。
画像提供:琉球大学