プラズマ技術によりCO2から炭素材料を大量合成 東京科学大

プラズマによりCO2を炭素材料としてリサイクルする技術を開発 東京科学大

東京科学大学は、プラズマ技術を用いて約600℃でCOから電気伝導性が高いカーボンブラックを連続かつ大量に合成することに成功したと発表した。これにより、CO2を資源化して炭素材料を合成することが可能になる。この研究成果はアメリカ化学会発行のエネルギー分野の学術誌に発表された。

2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを実現するために、CO2を資源として有効活用する技術の研究が進められている。CO2を化学的に分解し固体炭素材料(カーボンブラック)としてリサイクルする技術は、有望な低炭素技術の一つとして注目されている。その反応の第一段階としてCO2をCOに転換し、続けて第二段階としてCOを炭素に変換していく。第二段階のCOを炭素に変換する反応は通常は1000℃以上の高温熱プロセスで行われ、反応温度が低いほどカーボンブラックの収率が増加するが、反応速度が遅くなるという問題があった。

研究グループは、これまでの研究でプラズマ触媒を用いてCOを振動励起すると600℃程度の低温でもカーボンブラックの合成が促進されることを見出した。プラズマとは荷電された粒子のことで、プラズマ技術を用いると、電子温度だけを数万度に加熱し、反応場の温度は低く保ったままで化学反応を引き起こすことができる。

今回、研究グループはカーボンブラックが生成されやすい条件を調べた。温度、プラズマ印加・水素添付の有無で比較すると、約600℃、プラズマ印加・水素添付ありで最も高いカーボンブラックの収率を示した。この結果よりプラズマは、低温でも鉄酸化物を鉄に還元する役割、水素を励起して高い触媒還元能を与える役割をしていることがわかった。

カーボンブラックは600℃では反応器壁に焼き付くような問題を起こさないため、一時的にガス流量を増やして反応器に溜まったカーボンブラックを流出させることで連続運転ができる。

プラズマ技術によりCO2から炭素材料を大量合成 東京科学大

(a)反応前の反応器、(b)11時間の連続合成で反応器に蓄積したカーボンブラック、(c)ガス流によってカーボンブラックを反応器から排出させ反応器を始状態に復帰させた状態、(d)カーボンブラックを合成中のプラズマの発光を示した写真。

今回開発した技術をCO2電気分解反応などと組み合わせることで、CO2からカーボンブラックを合成するプロセスが実現可能になる。カーボンブラックは高い電気伝導性を有する炭素材料として有用である。今後は、多量に排出されるCO2をカーボンブラックに変換する装置の大型化を目指すとのこと。

写真提供:東京科学大(冒頭の写真はイメージ)