学習前の20分の運動が長期記憶を強化 効果は8週間

神戸大学や北海道教育大学による研究グループが、簡単な運動が記憶を数週間に渡って高めることを示した。単語を覚える前に20分間の運動を行った場合、その記憶が最大で8週間に渡って向上することが認められた。学校や職場での学習効率を向上させる新たな手段として期待される。この成果はオーストラリアスポーツ医学会発行の「The Journal of Science and Medicine in Sport」誌に11月4日よりオンライン公開されている。

ある時点で経験したことや学習したことなどの情報を数分から数十分、そして数年以上の期間保持する脳機能のことを長期記憶(エピソード記憶)と呼ぶ。この長期記憶は社会生活を送る上で重要な脳の機能のひとつだ。しかし、長期記憶として記憶した情報は時間とともに忘れてしまう。これについては、すでに1885年に心理学者エビングハウスが「1か月後には20%ほどしか記憶が残らない」と指摘していた。一方で近年、運動後に学習を行うことで記憶テストの成績が最長で1週間ほど向上することは示されていたが、その効果がどの程度持続するのかは不明だった。

今回、同研究チームは44人の大学生を対象に、運動による記憶力向上の効果を11週間に渡って調査した。中強度のサイクリング運動後の学習と座って安静にした後の学習とを比較したところ、運動後に学習を行った方が6週間後と8週間後の単語思い出しテストで、正答数が10%近く増えた。ただし、11か月後にはこの効果が消えていた。これらの結果は、学習前の運動が学習内容の長期的な定着を少なくとも8週間は強化することを示している。

今回の結果から、学校や職場で運動を取り入れることで学習や作業効率の向上につながる可能性がある。また、どのような運動がより効果的か、大学生だけでなく子どもや高齢者にも同様の結果が得られるかなど、さらに幅広い研究が期待される。

画像提供:神戸大学(冒頭の写真はイメージ)