サンゴがCO2吸収に貢献、骨格形成の仕組み検証で通説覆す 産総研など
産業技術総合研究所(産総研)は10日、ミドリイシサンゴが幼生の骨格を形成する仕組みを新たに発見したことを発表した。従来の見解を覆し、サンゴの石灰化がCO2を効率的に吸収していることを明らかにした。この発見は、サンゴ礁が地球規模のCO2固定において果たす役割を再評価する一歩となる。研究成果は、アメリカ化学会が刊行する学術誌に掲載された。
造礁サンゴは、石灰化と呼ばれる仕組みを通じて骨格を形成し、それらが集まってサンゴ礁を構成する。この石灰化では、大気中や海水中のCO2が海水中のカルシウムイオンと反応し、炭酸カルシウムとして固定される。この反応の過程で海水中にCO2が放出され、地球温暖化を加速する可能性が議論されてきた。
産総研、北里大学、琉球大学、東京大学などの研究グループは、ミドリイシサンゴの幼生の骨格形成時の水素イオン濃度(pH)を調査した。その結果、サンゴ幼生は骨格形成時に、pHを0.5から1程度上昇させていることが明らかになった。そこでは、サンゴの細胞内に存在するポリアミンが重要な働きをしていた。ポリアミンはCO2と容易に反応して保持する化学的性質があり、海水に加えるだけで簡単に炭酸カルシウムが沈澱する。サンゴもこのような化学的性質を利用して、炭酸カルシウムの骨格を形成するという新しい石灰化モデルを提案した。この際にCO2を放出しないことも確認された。
この研究では、サンゴの石灰化が必ずしもCO2の放出を引き起こさず、CO2を吸収することを示した。今後は、貝などさまざまな海洋生物の石灰化機構を検証すると共に、サンゴ礁海域での石灰化によるCO2固定量を再検証し、サンゴ礁が地球のCO2隔離に貢献することを証明していくとしている。
画像提供:産総研(冒頭の写真はイメージ)