2024年、自然科学系の研究動向 市民科学が学術研究を補完
2024年にNEWS SALTに掲載された自然科学分野の研究に関するニュースについて、いくつかのテーマごとに振り返る。
カーボンニュートラル
昨年に引き続き、今年もカーボンニュートラル実現のための研究を多く取り上げた。カーボンニュートラルは2050年までにCO2の排出を日本全体として差し引きゼロにするという目標だ。
このために政府が特に力を入れているのが、CO2を資源として有効活用を目指すためのカーボンリサイクル・マテリアル産業だ。本サイトではギ酸(https://www.newssalt.com/38145)、カーボンブラック(https://www.newssalt.com/38444)、あるいはコンクリート(https://www.newssalt.com/38201)にしようという試みを取り上げた。
新しいエネルギーを扱う水素産業、蓄電池産業も重点分野である。水素産業では、水素キャリアとしてのホウ化水素シート(https://www.newssalt.com/37231)、アンモニア固体(https://www.newssalt.com/37817)を取り上げた。蓄電池産業では、充電して繰り返し使える次世代二次電池の研究が進められている。今年取り上げたものでは、全固体電池(https://www.newssalt.com/37246 , https://www.newssalt.com/37522)、環境負荷の低い金属空気電池(https://www.newssalt.com/37356)、レアメタルフリーの電池材料(https://www.newssalt.com/37566)があった。
社会的な実装としては、太陽光パネルと蓄電池によるゼロエネルギー消費住宅の最適化手法の研究(https://www.newssalt.com/37811)を取り上げた。
ブルーカーボンの評価として、通説を覆してサンゴの石灰化がCO2を効率的に吸収するという研究も興味を惹かれた(https://www.newssalt.com/38457)。
環境問題
持続可能な経済社会システムを実現していくためには、環境問題を解決する技術が必要である。今年取り上げたものでは、廃棄物のカニ殻からエレクトロニクス素材を得る技術(https://www.newssalt.com/37374)、工場排水の硝酸からアンモニアを生成する光触媒技術(https://www.newssalt.com/37409)、微生物活用による鉱山廃水処理システム(https://www.newssalt.com/37801)、高温高圧水でプラスチックを分解・リサイクルする手法(https://www.newssalt.com/38261)があった。
特に画期的だったのは、自然現象である球状コンクリーションのメカニズムを応用した自己修復が可能なシーリング材(https://www.newssalt.com/37675)である。従来の手法では長期隔離することができなかった放射性廃棄物の地下処分や二酸化炭素の地下貯留を可能にする技術だ。
持続可能な農業のために海洋性光合成細菌バイオマスを窒素肥料とする研究(https://www.newssalt.com/37774)や、微生物による水田メタン排出削減プロジェクトにゲイツ財団が5億円の助成をするという記事(https://www.newssalt.com/38197)もあった。
農業、生物・自然
農業分野では、地域の活性化に特産品を利用しようとする研究が目についた。兵庫県姫路市のチョロギ(https://www.newssalt.com/37270)、立山連峰の積雪由来の納豆菌(https://www.newssalt.com/37749)、白神山地の植物由来の乳酸菌(https://www.newssalt.com/38308)などだ。
生物や自然の分野で、市民の撮った写真を研究に活用しようとする動きが見られたので紹介したい。海洋生物のガイコツホヤパンダ(https://www.newssalt.com/37209)、タツノオトシゴと共生するゴカイの仲間(https://www.newssalt.com/38432)、低緯度で観察されたオーロラ(https://www.newssalt.com/37797、https://www.newssalt.com/38354)など。市民科学が学術研究の補完的役割を果たす可能性が見え始めている。
参考記事
2023年、自然科学系の研究動向 カーボンリサイクル関連が進展(2023.12.14)
(写真はイメージ)