ホタルの発光物質ルシフェリンの簡便な合成法を開発 名大など

ホタルの発光物質ルシフェリンの簡便な合成法を開発 名大など

名古屋大学、産業技術総合研究所、中部大学の研究グループは26日、ホタルの発光物質ルシフェリンの簡便で実用的な合成法を開発したと発表した。これにより、科学研究現場におけるルシフェリンのより広範囲な利用が期待できる。この研究成果は国際学術誌に発表された。

ホタルの発光物質ルシフェリンは科学研究において、病原菌などの簡便・迅速な検出や、遺伝子組換え実験など、多くの用途で活用されている。しかし、ホタルが体内でどのようにしてルシフェリンを合成しているかはほとんど未解明だ。そのため、これまでは多段階で環境負荷の大きい化学合成によりルシフェリンが供給され、価格も高価であった。

研究グループは原材料の物質を中性の液体中で撹拌するという簡便な方法で、約0.3%と低い収率ながらもルシフェリンが合成されることを2016年に発見していた。研究グループはその後、この現象はフラスコの中で反応が無秩序に進行したためだと考え、この反応を詳しく解析し経路・機構を推定した。今回、推定した経路に沿って反応が進行する最適なタイミングと反応条件を整えることで、ルシフェリンの実用的な合成法の開発に成功した。市販されている安価な原料を使って、常温、常圧という温和な条件で、収率46%で高純度のルシフェリンを得ることができる。しかもこの合成法は、単一の反応容器内で複数の変換を連続的に進行させることができ、後処理・精製が一回で済むため、コストや環境負荷を低減できる。

今回の開発によりルシフェリンの合成コストの削減が実現できる。今後商業ベースの生産だけでなく、合成化学者でなくても気軽に使える合成法として、広く利用されることが期待される。

開発したD-ルシフェリンの合成法

画像提供:名古屋大学(冒頭の写真はイメージ)