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注目高まる「金継ぎ」 壊れたものを輝かす伝統技術を体験する

日本には古来より、器を漆で継いで長く大切に使い続ける「金継ぎ」という技術がある。金継ぎは器の割れ目や掛けを金粉で装飾して敢えて目立たせる技法である。修復により、割れる前よりその器の価値を高めることさえできるといい、近年、金継ぎは国内外で注目が高まっている。

私達は器が割れたり欠けたりした時、すぐにそれを捨ててしまってはいないだろうか。今回は、筆者が参加した金継ぎ体験について紹介する。

漆による継ぎの歴史

割れた器を継ぐ技法は、縄文時代の土器にもみられた。歴史的に有名な金継ぎの器は馬蝗絆ばこうはんという国宝のお茶碗で、平安末期に平重盛が中国から贈られたものだった。その後室町時代に将軍足利義政の所有となり、ひび割れの修復を中国に依頼した。しかし中国からは、もうそのこのような優れたものは作れないと、かすがいで修復して戻されたという器である。

器を金を使って装飾する技術はその後、茶の湯文化の中で発展していった。茶人として有名な古田織部は、器を十文字に割って貼り付け直したという。傷を敢えて美しく見せるという破格の美を目指した織部ならではの逸話である。江戸時代には、修復師と呼ばれる専門家がいるほど器の修復が流行った。

現在の漆文化と漆の効果

今日の日本では日常的に修復が行われることは少なくなった。手に入る漆もほとんどが外国産であり、日本産は8%程に過ぎない。国産の漆は主に国宝の修復に使われている。漆の木は数年育てても1回しか漆をとることができないためコストがかかり、国内の担い手は減っている。外国産の漆は、複数回漆をとる場合も多く品質が良くないという。

漆は接着のみならず、防湿、防カビ、防虫の効果もあり、物を長持ちさせることができる。例えば、ピアノに塗られた漆黒の漆は、YAMAHAの前身である日本楽器製造が、木材が乾燥してそれてしまうことを防止するために、輸入したピアノに、漆と酸化鉄を混ぜたものを塗ったのが始まりで、それが後に世界に広まったものだ。

金継の種類

金継ぎには大きく3種類、天然の漆を使う「本金継ぎ」、合成樹脂と天然の漆を併用する「乾漆金継ぎ」、合成樹脂のみを使う「簡易金継ぎ」がある。

本金継ぎでは、漆に米粉や小麦粉を混ぜて接着して、20℃以上湿度70%以上の場所で3週間程置いて乾燥させる。それを数回繰り返して最後に金粉をまぶすので、全体で3~4ヶ月はかかる。乾漆金継ぎは、接着には合成樹脂を使い、仕上げに漆と金粉を混ぜたものを塗って仕上げるため10日程度で完成する。簡易金継ぎは仕上げも合成漆を使う。

金継体験

今回、筆者は乾漆金継ぎを体験した。用意するものは修復をしたい器、金継用の接着剤、漆と金粉、接着面を埋めるのに使うパテ、筆、やすり、テープだ。乾漆金継ぎ用の道具のセットは店舗やオンライン販売などで数千円から手に入れることができる。

まずは器の欠けた断面の角をやすりで削り、テープで保護して接着剤で繋ぎ合わせて10分程置いておく。接着の際に割れ目がずれないように気を付けること、また乾燥させる時は縦に器を置いて乾かすことがポイントだ。その後接着した面にパテを塗り込んで埋め、紙やすりで接着面を整えてきれいにする。最後に、継ぎ目に合成漆と金粉を混ぜた金線を筆で描く。作業自体は1時間半~2時間で完了し、その後10日乾燥させて仕上げた。

修復前のかけた器

切り口を削った後、テープで保護した器

接着剤をつけて10分程おいておく
接着した面を粘土の様なパテで埋めていく

本漆と金粉を混ぜたものを塗り仕上げる

10日間おいて完成、黒い器に金が映えて美しい

体験後記

昔ながらの本金継ぎは数か月かかる作業となるが、乾漆金継ぎは比較的容易に行うことができると感じた。物を大切に使い、修復の中に美を見出してきた精神は、人生を大切に生きていく感覚にも繋がるだろう。今回の乾漆金継ぎ体験の講師であり金継師の萩原氏は、日本の漆文化が廃れていくことを懸念しており、少しでも皆に金継ぎの良さを分かってほしいと体験を行っているという。古くから日本人の日常生活にあり続けてきた修復の技術が、今後も受け継がれていくことを願う。

乾漆金継ぎの説明をする金継ぎ師、萩原利之氏

取材提供:Otonami