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歯周炎が認知機能や骨密度の低下を招くことが明らかに
藤田医科大学、慶應義塾大学、東京大学などの研究チームは、歯周炎が老化を加速させることを明らかにした。歯周炎とは進行した歯周病のことで、口の中だけでなく全身の健康にも影響を与えることは知られていたが、どのように臓器に影響を与えるのかは明らかになっていなかった。今回の研究で、歯周炎は認知機能や骨密度、筋力の低下といった「フレイル」を引き起こすことが明らかになった。国際学術ジャーナル「Inflammation and Regeneration」のオンライン版で2月3日に公開された。
フレイルとは、加齢や老化に伴って臓器の機能が低下し、健康を維持することが難しくなる状態を指す。高齢者医療では、このフレイルを防ぐことが重要な課題だ。一方、歯周炎は加齢とともに発症リスクが高まり、進行すると全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。これまでは、認知症と歯周炎の関連が注目されてきたが、歯周炎そのものがどの程度の期間で臓器に影響を与えるのか、また、どの臓器が影響を受けやすいのかは明らかになっていなかった。
同研究チームが軽症と重症の歯周炎モデルマウスを用いて実験したところ、歯周炎によって脳の海馬という部分に変化が生じ、認知機能が低下することを確認した。また、大腿骨の骨密度が低下し、筋肉の特に遅筋と呼ばれる持久力を司る筋繊維が影響を受けることが分かった。特に骨密度については、歯周炎が軽度で期間が短くても低下しており、歯周炎を治療しただけでは回復しないことも判明した。このことから、歯周炎の予防とともに、骨の健康を維持するための治療も必要であると考えられる。
今回、歯周炎は単なる歯の病気ではなく、全身の健康に大きな影響を及ぼすことが改めて示された。現状、内科外来診療時に口腔内の状態や骨密度の評価が行なわれることは少ないが、特に高齢者の診療時には歯科診療との連携が重要だと考えられる。また、歯周炎が筋肉に影響を与えることを踏まえると、高齢者だけでなくスポーツ選手なども歯周病のケアが重要と言えるだろう。
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画像提供:藤田医科大学(冒頭の写真はイメージ)