環境負荷が低く効率的にCO2を回収できる素材を開発 東京科学大学

環境負荷が低く効率的にCO2を回収できる素材を開発 東京科学大学

東京科学大学は4日、CO2を分離・回収する機能を持つ多孔材を開発したと発表した。環境への負荷が低い軽元素から構成され、低消費エネルギーかつ高いCO2選択性をもち、高吸着速度を実現している。この研究成果はNature Communications誌に掲載された。

2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを実現するために、CO2を資源として有効活用する技術の研究が進められている。そのために必要なのがCO2を回収し貯留する技術である。現行では化学反応を利用してCO2を分離・回収しているが、環境汚染につながりかねなかったりエネルギー消費量が過大だったりとの問題がある。

東京科学大学の研究グループは、CO2の捕獲のために微細な孔がたくさんあいた多孔体の新素材を開発した。この素材は共有結合性有機骨格(Covalent Organic Framework, COF)と呼ばれ、金属を含まず、炭素、水素、窒素、酸素などの軽元素から成り、環境への負荷が低い。

今回、新規性があるのはその構造である。巨視的には原子が2次元の層状に積み重なった形をしているが、微視的には孔の構造は3次元的で、2D-COFと3D-COFの中間的構造という意味で「2.5次元COF」と命名したという。この新素材は、多孔体の内部にCO2を捕獲する能力を持つアミノ基(-NH2)が超高密度に配置されている。

この新素材は固体のため、CO2分子の吸着熱が低くてエネルギーコストが抑えられ、吸着速度が速いという特徴がある。また、空気の主成分であるN2に対するCO2の選択比が他の既存の素材よりも大きくてCO2が効率的に回収できる。これらの条件を兼ね備える素材はこれまでになく、今回の開発は画期的といえる。今後、研究グループはさらに実証を重ね事業レベルでの展開につなげていくとのことで、今後の動向に注目したい。

(a)本成果で使用した二種類の原料分子。 (b)単位層が積層して2.5次元COFが形成される。(c)2.5次元COFの単結晶の光学顕微鏡写真。(d)機械的な力を加えて変形させた後の単結晶の走査型電子顕微鏡像。

画像提供:東京科学大学(冒頭の写真はイメージ)