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パン酵母から安価で高活性なリン化物触媒を開発 大阪公立大学
大阪公立大学は7日、パン酵母から作成した遷移金属リン化物の炭素複合体が、アンモニア合成の触媒として高い活性を示すことを発表した。安価な触媒による次世代エネルギーの供給への貢献が期待できる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。
水素やアンモニアは燃焼時に二酸化炭素が発生しないため、環境負荷が低い次世代エネルギーとして注目されている。水素は水を電気分解することで製造できるが、電極触媒として使用される白金やイリジウムは高価であり、実用化の足かせとなっている。またアンモニアは、ハーバー–ボッシュ法で大規模製造が可能だが、高温・高圧下に加え化石燃料も大量に消費するため、硝酸を電気分解して製造する方法が注目されている。
水素およびアンモニアの製造の鍵となるのは触媒だが、高価な貴金属触媒の代替となる触媒の開発が進められている。そのうちの一つが遷移金属リン化物だ。これはコバルトやニッケルなどの遷移金属とリンが結合した化合物で、科学的安定性が高いという特徴がある。しかし、原料となる高純度のリン化合物が高価であり、毒性が強く爆発の危険があるなど製造過程で取り扱いが難しいという問題があった。
大阪公立大学の研究グループは、パン酵母などの微生物細胞を化学触媒の材料とする研究を進めてきた。パン酵母には食品添加物として使用されるリン酸を取り込む性質がある。パン酵母と遷移金属のうち触媒としての活性が高いコバルトを混ぜて炭化させることで、遷移金属リン化物の炭素複合体を作成することができる。従来のパン酵母を用いてもコバルトとリンが2対1のリン化物を合成することができたが、研究グループはパン酵母の遺伝子変異によりリン酸含有量を高めたリン蓄積酵母を使用し、コバルトとリンが1対1のリン化物を合成した。
新たに開発された触媒は、水素発生反応では他の手法で作製したリン化物触媒と同等の活性を示し、アンモニア合成の電気触媒としては他の触媒と比較して最も高い活性を示した。
今後、同グループは、水素発生反応において白金触媒と同等の活性を目指してさらなる研究を進めていくとのこと。
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画像提供:大阪公立大
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