
クマノミがイソギンチャクに刺されない要因を解明 OIST
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は2月21日、クマノミ類がイソギンチャクと共生しながら、イソギンチャクの有毒な触手に刺されない要因を明らかにしたことを発表した。この研究成果は国際学術誌に発表された。
異なる種の共生の中で、最もよく知られている例の一つは、クマノミ類とイソギンチャクの共生関係だ。クマノミ類はイソギンチャクを住処としており、イソギンチャクの有毒の触手によって捕食者から守られている。しかし、クマノミ類がどのようにしてイソギンチャクの触手に刺されることなく安全に共生しているのかは、明らかになっていなかった。
OISTの研究グループは、フランス国立科学研究センターとの共同研究で、シアル酸という物質に着目した。シアル酸はほとんどの生物に自然に存在し、細胞間の相互作用やタンパク質の情報伝達などの細胞プロセスにおいて重要な役割を果たしている。このシアル酸が、イソギンチャクの刺胞(毒針細胞)の発射を引き起こす引き金になることがわかった。イソギンチャク自身は粘液中にシアル酸を持たず、自分を刺すことがない。
一方、クマノミ類は皮膚粘液中のシアル酸の値を極めて低く保っていた。脳や腸などの内臓には一定レベルのシアル酸が維持されているのに対し、体表を保護する粘液層では、共生関係にないスズメダイと比較すると、極めて低い値だった。このため、イソギンチャクの刺胞の発射を引き起こすことがないと考えられる。
また、クマノミ類の発達段階によっても違いがあった。イソギンチャクと共生する準備ができていないクマノミ類の仔魚は、シアル酸が通常値で、イソギンチャクに近づくと刺される。しかし、変態を経て特徴的な白い縞模様と鮮やかなオレンジ色の体色を発達させる時期になると、シアル酸の値は低下し、安全にイソギンチャクの中に入れるようになる。
今後は、クマノミ類とイソギンチャクの共生のメカニズムをより詳しく解明することを目指すとしている。


画像提供:沖縄科学技術大学院大学(冒頭の写真はイメージ)