
OIST、サッカーチームの行動パターンから生物の捕食行動と同等のパターンを発見
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は11日、サッカーチームの集団の動きに、生物の捕食行動の際に現れる「レヴィウォーク(Lévy walk)」という行動パターンを発見したと発表した。この研究によって集団としてのダイナミクスを理解するための新たな道筋を開く可能性がある。この研究成果は国際学術誌に掲載された。
レヴィウォークの概念はフランスの数学者ポール・レヴィが提唱したもので、短い局所的な動きが頻繁に起こり、時折、長い直線移動が現れるという特徴がある。もともとは液体中を漂う粒子の動きを説明するために提唱されたレヴィウォークは、超低温環境での原子の運動や細菌の群れの運動まで幅広い現象を説明できることがわかってきた。特に1996年に餌を求めてさまようアホウドリの動きがレヴィウォークを示すことが実証された。レヴィウォークの行動パターンが、生物にとって資源が得難い場合に、周囲の資源を利用しつつ新たな機会を探索するために最適な戦略だと解釈されている。
OISTの研究チームは、「競争する生物の集団」であるサッカーチームの動きに、レヴィウォークの行動パターンを初めて発見した。同研究チームは、日本のプロサッカーリーグであるJリーグの試合の試合中の選手とボールの位置を1センチ単位の精度で正確に記録したデータを使用。統計的検定により、選手たちがボールを追いかけているときに、レヴィウォークを示していることがわかった。すべての選手の平均ポジションであるチームの重心でも同様の動きが見られ、ボールを奪取しようとする際には、チームが一つの行為者として行動しているのが示唆される。
さらに同研究チームは、選手がレヴィウォークを示す度合いと、選手とボールやチーム重心までの平均距離との間に強い相関関係があることも発見した。レヴィウォークの動きを強く示す選手はより活発で、一般的にボールにより近く、チームのダイナミクスにより貢献していることが示唆される。
同研究チームは、サッカーチームの選手個人およびチーム全体の行動からレヴィウォークのパターンを発見したことにより、人間や群れで狩りを行う動物が共通の目標を行うためにどのように協力し合っているか洞察できるのではと考えた。また、集団スポーツに人気があるのは、そのゲームに古い採取パターンと同じものがあるからとも考えられる。この研究が従来の単一の脳を中心とした認知の考え方に疑問を投げかけ、集団としてのダイナミクスを理解するための新たな道筋を開くものだとしている。

両チームの全選手の軌跡は半透明の点線で、各チームの重心の軌跡は実線で示した。試合開始から5分間を示している。赤がチーム1、青がチーム2。
画像提供:OIST