「デジタル・フォレンジック」が導く証拠【ニュースのコトバ解説】

3月31日にフジテレビと親会社が設置した第三者委員会が公表した調査報告書で、社員に貸与した社用のスマートフォンを解析し、削除されたショートメールを「デジタル・フォレンジック技術」により復元したことで、当時のフジテレビ社員B氏と中居氏とのやりとりが明らかになった。近年、犯罪捜査などで欠かせない技術として利用されている「デジタルフォレンジック (Digital forensics)」について解説する。

フォレンジックは「科学捜査、裁判証拠収集」を意味する英単語で、デジタル・フォレンジックとは、コンピューターや記録媒体に含まれた法的証拠に関わる情報を取り扱う法科学の一分野を指す。メールなどの通信履歴や音声・録画データなどの電磁的記録は、客観的な証拠として犯罪捜査の決め手になりうる一方で、消去・編集による改変が容易なため、削除されたデータの復元や改変の痕跡がないかなどを解析する必要がある。専門家の元で電子機器等に含まれるデータを取り出し、完全なコピーを作成し、解析を進め、その結果を報告するまでがデジタル・フォレンジックの一連の流れとされている。

日本では、2000年代から本格的にデジタル・フォレンジックが犯罪捜査で用いられるようになった。内部が浸水したハードディスクを復旧させ、著作権法違反を裏付ける電磁的記録を抽出したり、スマートフォンの位置情報から被疑者が強盗事件発生前後に犯行現場にいたことを突き止めたりと、検挙に繋がる成果を挙げている。この他にも、デジタル・フォレンジックは、サイバー攻撃や情報漏えい事件の捜査や不正行為への抑止力としても重要性が高まっている。

今後、さらに巧妙化・多様化するサイバー攻撃・サイバー犯罪や最新技術に対応したフォレンジックツールの開発とあわせて、高度な技術を駆使する人材の育成が求められる。

(写真はイメージ)