鉄さびで車の排ガス浄化性能が向上 東北大

東北大学の研究チームは2日、車の排ガスをきれいにする装置の性能を「鉄さび」(酸化鉄)を加えることで向上させる方法を発表した。この方法で作られた装置は、400℃において酸素を蓄える能力が従来より4割以上増え、コストの削減や貴金属の使用量を減らすことができるという。3月23日付のナノサイエンスに関する学術誌に掲載された。

自動車産業では2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、エンジン搭載車から電気自動車(EV)への移行が進められている。しかし近年、EVの販売台数に陰りが見られ、当面はエンジン搭載車が多数を占める状況が続くと予想される。このため、エンジンの高性能化に加えて、排ガスを浄化する装置の高性能化・高機能化が求められている。

これまで、車の排ガス浄化装置には、セリウムとジルコニウムという元素からなる酸化物が使われてきた。しかし、これらの材料の性能を向上させるには、1200℃という高温での処理やパラジウムなどの高価な貴金属が必要で、コストがかかるという課題があった。

今回、酸化鉄を5%加えるだけで、800℃という従来より低い温度でも高性能な酸化物を作ることができた。さらに、製造時の酸素の量を精密に調整することで、材料の結晶構造を最適化し、性能を向上させられることがわかった。 この成果により、排ガス浄化装置の製造コストが下がり、貴金属の使用量も減らすことができると期待される。今後は、この技術を実際の車に応用し、長期間使用した場合の耐久性などの評価が行われる予定だ。また、この技術は、水素を作る装置や高効率な発電装置など、他の分野への応用も期待されている。

酸化鉄添加Ce・Zr系酸化物が規則構造となる仕組み

画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)