セルロースを前処理なしで糖に分解、効率的なバイオマス変換に期待 東大

東京大学は22日、バイオマス資源であるセルロースを前処理なしで糖に分解することに成功したことを発表した。効率的なバイオマス変換を実現する新しい触媒を設計するための指針になることが期待できる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。

バイオマスは生物に由来する再生可能な有機物資源のことであり、地球上で最も発生量が多いバイオマスは木の主成分であるセルロースだ。セルロースはグルコースという糖の分子が多数つながった物質で、分解すればグルコースを取り出すことができる。

しかし、天然のセルロースは剛直な結晶構造を持ち、分解が非常に難しいことが知られている。天然の結晶セルロースを処理するために、従来は前処理として長時間粉砕して結晶構造を壊してから、活性炭などの触媒を用いてグルコースに分解していた。しかし、前処理のエネルギー消費量が大きく、セルロースの資源利用を阻んできた。

東京大学の研究グループは、従来の方法はセルロースも活性炭も大きいため両者の間に接触が形成できないのが問題と考え、10~40nm程度のナノサイズの柔軟な炭素を開発した。ナノサイズ炭素触媒と結晶セルロース、水を反応器に入れ加熱すると、結晶セルロースの分解が進行してグルコースが得られた。グルコースの収率は一回目の反応で21~34%、二回目の反応で58%という比較的良好な値で得られるようになった。

ナノサイズの炭素が結晶セルロースを攻撃する模式図

今回の研究により、触媒をナノサイズのフレキシブルな状態にして結晶セルロースの表面に着ければ、分解が進行するというアイデアが確認できた。今後はこれを元にさらに優れた触媒の開発を進めていくとしている。

画像提供:東京大学(冒頭の画像はイメージ)